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あの夏、いちばん静かな海。のnosのレビュー・感想・評価

4.4
タイトルがラスト数分で出るんだけど、それ以前が彼女の回想で、以降が現在の時間軸らしい。
つまり、大半を締めるエピローグ的な部分でストーリーを起承転結させている。

当時の北野監督ならではの一捻り効かせた手法で、ストーリーの軸が彼女目線にある事と、回想から現在の彼女の空白の時間に想いを馳せるとより沁みる。
「この夏」ではなく、「あの夏」なんだと。

どこか、自分の思い出なんではないかと錯覚するような映像で、懐かしくほっこりする気持ち、人間味のある優しさ、純粋さに溢れた映画。

無駄な台詞や説明的な描写を極力省きながらも、奥ゆかしく情に訴えかける古典的な日本映画のスタイルがベース。
そこに無駄にも思えるが、どこか滑稽でくすりと笑ってしまうような小ネタを混じえ、人間味やパーソナリティーを味付けしていく北野節はこの三作目で既に完成の形を見せていた。
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