たかはし

あの夏、いちばん静かな海。のたかはしのレビュー・感想・評価

3.7
北野映画に出会って、街の見方が変わった。
いままで美しいと思った風景は、壮大な自然だったり、古い歴史の残る建造物だったり、あるいは異文化の香りがする外国の街並みなどだった。
北野監督の見せる映像は、それらとは全く別の美しさが日本にはあるのだと教えてくれる。
うまく言葉にしづらいが、人々のリアルな暮らしが息づく雰囲気だったり、平凡な街の中にあるちょっと絵になる瞬間だったり。
あとはなんといっても青が美しい。
そういうものを探しながら街を歩くようになって、人生がちょっとおもしろくなってきた。
こういうことを実感するとき、映画って素晴らしいなあ、と思わされる。

本作はそんな北野映画特有の映像美もさることながら、極端に無駄を排した演出が特徴的。
主人公たちは聾唖なので、会話はほとんどない。
背景も語られない。
主人公たちの出会いや、人生や、そして終盤にある別れについても、全く説明をしない。
そうやっていらないものを省いていくと、人間の本質的な愛情とか生き様とかが見えてくるのだと、北野監督は考えたんじゃないだろうか。

とはいえ、これほど少ない説明で物語をつくるのは本当に難しいと思う。
普通は違和感や疑問が生まれるものだが、それがないのは流石だなあ。

説明過多でガチャガチャうるさい最近の邦画は好きじゃない(ものが多い)。
バカでもわかるようにしないと売れないからだろうが、正直言ってクソだ。
映画に「わかりやすさ」なんて求めていないのに。
たかはし

たかはし