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ゼイリブのFMLのレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
4.0
やべえ、この映画、ブッ飛んでる。

一言でまとめるとサングラスをかけたら街中に隠されたメッセージや人間に化けたエイリアンが見えるようになる映画
(今の技術なら、特製のサングラスかけたら同じように画面が変わって見えるみたいなことできそうやけど無理なんかな
3Dみたいに入場前に配ってさ)
設定だけでもなかなかのブッ飛び具合だがそれ以外もいろいろすごい

まず時間の使い方
この作品約95分しかないのに、それでもすごく長く感じる
ゆったーりした音楽にゆったーりしたなんてことない風景がところどころ挟まれることにより、なんともいえないもどかしい気持ちにさせられる
そのもどかしさの正体は、"早送りしたい"
自分は映画が好きで、名作も迷作も観てきたから全然いいけど、普段映画を観ないような人たちはつい早送りしてると思う
特に、2倍速で映画観る人たちが増えてる昨今なら尚更のことかもしれない
要するに"ゴッドファーザー"の時にも感じた、上映時間が長くなることを全く恐れないあの余裕を、この映画も持ち合わせてるということである
そしてそれでも100分に満たないというのがこの映画のブッ飛びポイントでもある
この点に関しては、自分で興味を持って当時なら映画館に、今ならレンタルや配信でこの作品を観てるくせにつまらないところはすぐ飛ばそうとする人間の自分勝手さを浮き彫りにしてる、ととらえることもできる
特に、中盤の有名な喧嘩シーンなんかはその最たる例といえる
(全く関係ないけどフランク役の人、誰かに似てると思ったら個人的コメディNo. 1の"メリーに首ったけ"のメリーのお父さん役だった
まさかこんなところで出会うとは
こういう思いがけないつながりを見つけるのも映画鑑賞の楽しみのひとつですよね)

そして、人間に化けたエイリアンを撃ち殺し、顔を晒され逃亡犯になってしまった主人公のナダ(ロディパイパー)
ナダはサングラスをかけてるのでエイリアンだとわかるが、周りの一般人たちからすれば人間を撃ち殺した殺人犯ということになるわけだが、ナダはわりと普通に街を歩いて、走ってエイリアンたちから逃れながら隠れ場所を探す
そのナダに、街の人々は全く気づかない
テレビでナダの顔が大々的に流されてるにも関わらず、である
これはいかに人が自分以外のことに目を向ける余裕がないかを表す役割を果たしている

でも実際そんなもんなのかもな
もしかしたらただ似てるだけの人かもしれない
てか、面倒なことには巻き込まれたくないし
気づいたとしても気づいてないふりをしてしまうかも
そんな世の中で隠されたメッセージなと探る気にもならず、ましてや隣人の正体がエイリアンなんて知る由もない
だって毎日挨拶してたとしても名前すらも知らない、"ただ家が隣なだけの他人"の何に興味を持てばいいのか
まぁよっぽどの美人とかなら話は別だが、大抵どうでもいいことだろう

隠されたメッセージ、サブリミナル、洗脳、生活と労働と娯楽
仕事終わりのビールとテレビだけが楽しみの人生で、そんな権力と戦う気合いがあるかどうか
たとえそれを買うように仕向けられていたとしても、最終的にそれをレジに持っていったのは自分自身
住んでる環境も仕事も何もかも、自分で選んだもの
確かに"何かのせい"で"何かおかしいこと"が起こってるのも事実
けど"何かおかしいことに気づいたならそれを変えていかなければいけない"のも事実
その気がないなら、めんどくさいからこのままでいいやって思いながら堕落した生活を続けるなら、文句を言う資格は残念ながらない。
ナダは、信念と誇りを持って世界を変えた。
それはまさに革命そのものだった。

でも知ってる?
革命はテレビには映らないらしいよ。
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