Omizu

或る殺人のOmizuのレビュー・感想・評価

或る殺人(1959年製作の映画)
3.8
【第20回ヴェネツィア映画祭 男優賞】
『枢機卿』オットー・プレミンジャー監督がロバート・トレイヴァーの同名小説を映画化した作品。ヴェネツィア映画祭で男優賞(ジェームズ・スチュアート)を受賞、アカデミー賞でも作品賞など6部門でノミネートされた。

面白かった。レイプされた妻のために復讐した男をめぐる法廷劇。原題は「Anatomy of a Murder」であり、『落下の解剖学(Anatomy of a Fall)』を想起させる。実際オマージュしているそうだ。

全てが解決するわけでもないグレーな後味も実際似ている気がする。プレミンジャー作品としては『バニーレークは行方不明』がすごく好きなのだが、どのジャンルでもそつなくこなす監督という印象。でも『ローラ殺人事件』もよかったしサスペンスが得意なのかな。

淡々と事件を描きつつ、全てが収まるべきところに収まりきらないということをしている。肝心なことは闇の中。これをスッキリしない、というべきかは好みが分かれるだろう。

法廷サスペンスとしてよく出来ている。2時間40分と長い作品だが、これだけの長尺に耐える語り口になっていて素晴らしい。強固な演出と高いプロダクションに支えられた秀作サスペンス。

アカデミー賞では無冠に終わったが、『ベン・ハー』があったからね。仕方ない。クオリティとしては負けないし、脚色賞くらいとってもいいんじゃない?(受賞は『年上の女』)と思える出来だった。
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