Hitomi

生きものの記録のHitomiのネタバレレビュー・内容・結末

生きものの記録(1955年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

三船敏郎、志村喬、お二人とも名演技であることは大前提として。

死ぬのか、原水爆に殺されるのか。
家族も妾も連れてブラジル移住の決断と巻き込むのはありがた迷惑なのか。
「家族のことを思ってしたこと、気持ちは分からなくはなく、日本人皆に強弱の違いはあるものある気持ち。あの老人の姿は我々にはこたえる。」
無意味にお金を使うのと、原水爆への予防措置との境目はどこなのか。常識を外れるのか否か。
それで準禁治産の宣告になるものなのか。
「あの老人は限度がない。突っ込んで考えすぎる。」
それが準禁治産者になるとは。

「心配はほどほどにせねばなりませんな。」
わかってはいるはず。苦しい。苦しい。
離れるために工場さえも焼き尽くす。
ちょうど話を聞いたばかり。実行に移してしまう。ブラジルへの執着。原水爆に脅かされる日々の恐怖。

「正気でいるつもりの自分が妙に不安になる。狂っているのはあの患者なのか。こんな時勢に正気でいられる我々がおかしいのか。」
この感覚がわかる人が多いのでは。特に私は日常においても多くの共感を覚えた。

「よくおいでなすったなあ。ここならもう大丈夫。もう安心なさい。ところでその後、地球はどうなりました?人はまだたくさんおりますか?え?そりゃいかんなあ。そりゃいかんぞ。早く逃げないとえらいことになるぞ。何故それがわからんのかね。早くここへ。早くこの星へ逃げてこにゃいかん!
ああ!地球が燃えとる!地球が燃えとるぞ!あああ!燃えとる!ああ、燃えとる燃えとる。ああ…。とうとう地球も燃えてしまった。」

こんなに鬼気迫る映画を作れる黒澤明監督。もう本当にすごい。人間の感情、思考、弱さ、すべてを露わに書き出し見せる。
どちらが正しいのか。
どうすればよかったのか。
彼を狂わせたのは、原水爆なのか、周りの人達なのか。
Hitomi

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