かーくんとしょー

シコふんじゃった。のかーくんとしょーのレビュー・感想・評価

シコふんじゃった。(1991年製作の映画)
4.8
子どもの頃から何度観ても古びない、平成の邦画トップクラスの名作
内容と笑いのバランスという意味では、全邦画中トップといっても良いほど。(この点で比肩し得るのは「ALWAYS 三丁目の夕日」くらいか。)

日本には元々アイロニーやブラックジョークの文化がないためコメディー作りは非常に難しいのだが、絶妙に笑わせつつ感動させてくれる。

笑いという点では、竹中直人と田口浩正、柄本明というずば抜けたタレントを揃えており安心感抜群。
彼らは非現実的なことを非現実的に演じても、妙にあり得そうだと思わせる力があり、尚かつ嫌味がない。
(田口浩正の登場シーンは本当に最高だ。)

設定面でも、おふざけしても許される唯一の世代の学生時代、もしくは大学という浮世離れした空間を用意したのが大当たり。
高校生以下ではあんなにはふざけられないし、大人がやったら痛々しくなってしまう。

また、相撲という揺るがぬ歴史を持つものをイジるのも上手い。
根底に揺るがなさがあるからこそイジると面白く、イジっても嫌味が出ないので、奥手の日本人でも笑えるのだろう。
(京都人の腹黒さをイジっても京都人のプライドが揺るがず、むしろ自分たちでも開き直ってネタにしていることに何となく似ているように思う。)

笑いばかりにフォーカスしたが、感動や緊張の名シーンもふんだんに用意されている。
六平直政と柄本明がぶつかるシーンはこちらが泣き出しそうになるほどの迫力で、名優の名優たる所以が遺憾なく発揮され、田舎の雨の中で田口浩正が黙々と稽古するシーンも良い。竹中直人渾身の二勝には笑いと感動が凝縮されているし、仲間のためにスパッツを脱ぎ捨てる留学生も漢気をくすぐる。

太った女性を男に見立てて男子の試合(!)に上がらせたのはいくらなんでも無理やり感があるが、清水美沙の最後のセリフの伏線でもあるので、ここは寛容に見逃そう。

こうして改めて見ても隙がほとんどなく濃密だが、結末はスポーツもの・青春もの特有の爽やかさが吹き抜け、観終っても胃もたれしないのも文句なし。

最後に、田口浩正の登場シーンとともに抱腹絶倒なのが「本日医科大学」。
この言葉遊びのセンスには敬服。

written by K.
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