筋肉的キリスト教徒

キングダム・オブ・ヘブンの筋肉的キリスト教徒のレビュー・感想・評価

キングダム・オブ・ヘブン(2005年製作の映画)
5.0
deus vult!と叫びたくなる映画かと思ったら、逆にキリスト教勢に苛々してしまう映画だった。
BGMは中世風味で、時代特有の妙にファンタジックな雰囲気を醸し出す。

時は1184年、中世。
フランスの一鍛冶屋に過ぎない男、バリアンが実はイベリンの領主ゴドフリーの私生児で、妻の「自殺」と殺人の罪を背負い、聖地エルサレムへと赴く。

ゴドフリーがバリアンを試す場面で、屋根、鷹の構え(日本では上段の構え)を教えるが、恐らくゴドフリーはドイツ系の流れを汲んでいると推測できる。

エルサレム国王ギー・ド・リュジニャン、強盗騎士ルノー・ド・シャティヨンの二人が【キングダム・オブ・ヘブン】におけるヴィラン的役割を与えられている。実際史実でもろくでもない連中だから仕方ないけど。
比してイスラム教勢は対照的である。
サラーフ・アッディーンは優れた王として、その家臣らも寛容な人柄で描かれている。
イスラーム世界から見た十字軍がどういうものだったか、あまり明るくないので何とも言えないけれども、この役割の与えられ方は印象的。

カラクの戦いではボードゥアン4世が聖十字架(後のハッティンの戦で失われる)を掲げて援軍を率いる。これぞ十字軍って感じ。

エルサレム籠城戦ではトレビュシェット、バリスタ、破城槌と攻城兵器が大活躍!広大無辺の砂漠を背景にベルフリーが進撃する場面なんか最高。

やっぱりこの映画で一番外せないのは、ボードゥアン4世の美しさだろう。
ユダヤ・キリスト教徒とイスラム教徒が共存する世界=キングダム・オブ・ヘブンを築かんと、癩病に蝕まれつつも尽力する姿こそ「王の中の王」の象徴である。