B姐さん

グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独のB姐さんのレビュー・感想・評価

-
繊細で個性的。変人で社交性がなく、奇行が目立つ。異端児でコントロール・フリーク。それでパラノイア。薬漬けになり、愛する人も去って行く。
とまあ、ベタな天才のイメージのテンコ盛りだったりする。
するのだが、このドキュメンタリーは“神話と現実”、“パブリック・イメージとセルフ・イメージ”を関係者の証言により丁寧にほどいていく。
だからグールドの演奏に興味を持って、人となりを知るにはピッタリの入門編だ。

哲学者とも言うべき、独特な音楽家に対する解釈、演奏の背後にある思想はほとんどなし。テクニックの秘密も(映像特典では少しあるが)。でもこれはなくていいと思う。

少し物足りなかったのは、グールドの作曲家コンプレックスというべき屈折した感情。ゆえに演奏家としての特殊性が際立った下りがあっさりスルーされていてもう少し突っ込んでもよかった気がする。そこがグールドの魅力のキモだったりするからだ。

冒頭グールド自身のナレーションで語られる
「音楽は私を世俗から守ってくれる」という言葉。
仕事の昼休み時、「ゴルトベルク変奏曲」のアリアを聞いていると本当にそういう気分になる。だからこの至福の時を邪魔されるとハンニバル・レクター博士のようになってしまうのだ。

DVD(11/16/2014)
http://youtu.be/Jgza7PwUr6k
http://youtu.be/LSaYoBn1IWo
B姐さん

B姐さん