ボブおじさん

マンハッタン無宿のボブおじさんのレビュー・感想・評価

マンハッタン無宿(1968年製作の映画)
3.4
セルジオ・レオーネとのコンビによるマカロニ・ウエスタン3部作の成功を引っ提げて凱旋したクリント・イーストウッドが、もう1人の恩人ドン・シーゲルと最初にタッグを組んだ記念すべき作品。

現代を舞台にし初の主演作で、「ダーティハリー」の原点とも言われるハードボイルドアクション。犯人を逮捕するためなら手段を選ばない型破りな保安官補クーガンをイーストウッドが演じる。

アリゾナで人を殺してニョーヨークで逮捕された凶悪犯の身柄を引き取るため、生まれて初めて大都会を訪れた田舎の保安官補クーガンは、複雑な警察組織のやり方に業を煮やし、独断で病院へと乗り込んで入院中の犯人を連行してしまう。しかし、空港で犯人の仲間に襲われて彼を取り逃がしたクーガンは警官を解雇されてしまうが、ひとりの男として犯人を追うことを決意する。

原題の「Coogan's Bluff」はニューヨークにある丘の地名を指すが主人公のハッタリとも受け取れる。邦題は日本人に より聞き覚えのある地名と無宿(宿無し・流れ者)の響きから取ったのだろう。どことなく「拳銃無宿」などの西部劇が流行った60年代らしさが漂っている。

イーストウッドとドン・シーゲルが組んだ映画にハズレ無しとよく言われるが、個人的にはそうでもないと思っている。その代表格が残念ながらこの作品。

後に名作を連発するこの名コンビだが、まだイーストウッドを使い慣れていないためか、脚本にテンポとキレがなく、イーストウッド特有の苦み走ったアンチヒーロー感が全開されていない。

それでもテンガロンハットにウエスタンブーツという都会に似つかわしくない出で立ちで暴れ回る激しいアクションを通して、この作品で何かを掴んだであろうこの名コンビは、この映画での不完全燃焼を次回作の「真昼の死闘」では払拭してくれる。その意味ではこの映画はマカロニ・ウエスタンの世界から一歩踏み出すきっかけにはなったのかもしれない。