焼きぷりん

無法松の一生の焼きぷりんのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
4.2
乱暴で酒飲みで常識はずれの『無法松』。街の嫌われ者でもあり、人気者でもある。そんな彼が、子持ちの未亡人に出会い惹かれていく。

きっぷのいい男。竹を割ったような性格の無法松。彼の言動はなかなかに破天荒でありながらも、一方で裏表のない態度や豪胆な振る舞いに魅力を感じられる一面も。子供が無法松から強い生き方を学んでいくのだが、微笑ましいシーンも盛りだくさんですごく良い。

それでいて恋愛に不器用。淡い恋心を抱きながら、何年にも渡って打ち明けられずにいる。だが、単に奥手という訳ではなく、育った環境、身分などが決して良くない無法松だが、それを理由に自分自身を卑下しているのが、あと一歩踏み出せない原因であった。結果的に、最期までこの恋は実ることはないのであった。

切ないラスト。彼の走馬灯には彼女と出会ってからの思い出ばかり。この孤独とも幸せともいえる人生だが、私は成就せずとも大事に想えるものに出会えたことは、この上ない幸せだったと思う。

完全なバッドではなく、ビターなエンディングの余韻が何ともいえない。二人が結ばれていたら、また別の感動があったかもしれないが、あえてのほろ苦い幕引きは久々に良いものだ。
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