教授

無法松の一生の教授のレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
-
1943年、坂東妻三郎主演のリメイク。
戦前の日本で軍部による「検閲」、戦後はGHQによるカットを受けるという憂き目に遭い、戦後のカラー作品として、稲垣浩監督は、思う存分に撮り切った作品。

本作の美麗さは、まさに「映画の教科書」というべきカメラワークと編集。
セット撮影に名優たちの怪物的演技力。
「映画」という映像表現のカタルシスが全編に満ちている。

クレーンを使った冒頭の長回しショットと、長屋のセットの豪華さは、日本映画の豊かさな時代を象徴した楽しさに満ちている。
高校の運動会の徒競走に飛び入り参加する松五郎(三船敏郎)とそれに声援を送る良子(高峰秀子)母子のシーンのカットバック。
白眉の小倉祇園太鼓のミュージカルシーンのダイナミズム。
人力車の車輪の回転が映写機の回転とリンクして走馬灯的に表現されるイメージショットなど「映画的」シーンの豊かさが豊富。

喧嘩を咎める結城(笠智衆)と松五郎の後腐れのないシンプルなやりとりや、ラストにおける松五郎の積年の感情の爆発と無念。
良子の嗚咽の感情のバランスなど、演技的なハイレベルさによる演技の楽しさと切実さ。

的確なコントロールによって全てが「映画」に奉仕されているリズム感とテンポの良さでとにかくしあわせな映画。
教授

教授