みおこし

無法松の一生のみおこしのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
4.0
昔の日本の女優さんで一番心惹かれている高峰秀子さんの作品を、ちょこちょこ見て行こうと思っています。どうしても洋画ばかり観ちゃうので、祭りをやるほど頻繁には観られないかも知れないけれど少しずつ邦画に親しんで行こうかと。

明治時代の福岡県小倉。暴れん坊で粗野な人力車夫の無法松こと松五郎は、ひょんなことから怪我をした少年・敏雄を救ったことから、彼の両親である吉岡夫妻と親しくなる。しかし、その矢先に吉岡氏は他界し、その妻である良子は未亡人となってしまう...。

高峰さんが出ている作品では、『二十四の瞳』『名もなく貧しく美しく』を観たのですがどちらも筋金入りの名作でした。そして本作も個人的にまた忘れられない素晴らしい珠玉の一本。一見町のトラブルメーカーの無法松が、誰よりも慈愛と正義感に満ちた男だと分かっていくにつれて、どんどんその展開から目が離せなくなりました。
筋骨隆々で豪快な無法松を演じられるのは、当時も今もこの世にたった一人、間違いなく三船敏郎さんだけ。
どんなに街中で暴れることができたって、意中の相手、良子への想いだけはどうしても言葉にできない、行動にできない...。この不器用まっすぐな姿がなんて愛おしいことか。いわゆる【日本男児】のイメージをストレートなまでに体現していて、無法松というキャラクターは確実にハリウッド映画には存在し得ないキャラクターだなと。
そして、高峰さんもいかにも大和撫子という感じの、決して自分の感情を表に出さないひたむきな未亡人役。
...ハリウッド映画のストレートさも大好き、いや、むしろ自分の恋愛においては絶対ストレートな方がいいなと思う反面で(笑)この日本人ならではの「お察しください」の精神がよく出てるラブストーリーが昔から大好き。言葉にすることが必ずしも愛じゃなくて、お互いの心の機微を読み取り合うのも愛の形だったりするんだなと。
昔って、自分の想いを押し殺さなければいけない状況が今よりも圧倒的に多かったわけだから、本当に想像を絶します。好きな人に好きとさえ言えないなんて悲しすぎる...。でも本当に好きだからこそ、胸に秘めた愛を貫き続ける。無法松なりのひたむきな純愛にラストは涙、涙でした。
運動会のシーン始め、親子との交流も素敵。素直だった敏雄が思春期を迎えるシーンとかもリアルそのもの。

カラー映画なんですが、日本の古い映画で初めて「色彩豊かで美しい」と、カラーで撮る意味をひしひしと感じた作品でした。蒸し暑い夏、ひたすら寒い冬...四季の美しさが全面に現れていてすばらしかった。
物語が展開するたび、人力車の車輪が映るのも印象的。当時としてはセンセーショナルとも言える鮮やかな映像美にも酔いしれることができました。

邦画もいいなあ...と思わせてくれた傑作でした。長さもちょうどよい!
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