ほおづき

悪の教典のほおづきのレビュー・感想・評価

悪の教典(2012年製作の映画)
3.5
貴志祐介さんの小説は結構好きなんだけど、この作品はあまり人気がなさそうだったから原作も未読。

どんな駄作なのかと恐る恐る観たけど、序盤はきちんとサイコパスで観客にだけ怪しさを匂わせるモヤモヤ感があって割とよかった。
後半はなんだか突然ゲームっぽいなって思ったけど、都会の猟奇的な殺人鬼をクリスチャンベールが演じた映画『アメリカンサイコ』を思い出した。

イケメンが子気味よく人を殺していく様は、あまりの過剰演出とあまりのコザッパリ感にぜんぜんグロさを感じなかった。むしろゲームのような爽快ささえ感じてしまう。それだけでなく、ただ叫ぶだけで何もしない生徒達の殺され方には思わず笑ってしまう滑稽さがあった。
実際に目の前でおきていたら吐いてしまいそうな惨状でも、仰々しくわざとらしい演出で殺人をコメディととらえる感覚は『アメリカンサイコ』で味わったものと似ている感じがした。

逆に松岡茉優さんが飛び降りて足を折る(?)ところの演出はかなり痛さが伝わり身をよじらせた・・・痛みを想像できる感覚はリアルに、苦しみが想像できない死はコミカルに描く対比は面白いと思った。



そして突然出てくるシュールな回想シーンや、カラスやらの妙なエピソードはまぎれもなく貴志テイストを感じるw
わかるこれw あの人の小説って博学なのと文章力や表現力のうまさ、そして膨大で綿密な下調べのせいで絶妙なリアリティが追加されるから、超大作を読んでいる感じがするのに実はもの凄くB級ぽい展開っていうあの感じ。
あー・・・原作読んでないけど、なんとなく伝わってくる。この映像化不可能臭・・・

監督誰だろ?と思って見たら、三池監督・・・。。。
節操もなく、愛のない原作レイプやリメイクや続編を作り続けていると悪名高い・・・と、なぜか脳内にインプットされている監督w

でも、貴志祐介さんの小説を映像化するのってほんとに難しい気がする。
個人的に最高傑作と思ってる『天使の囀り』でさえも、映像化したらB級になると確信できる。


と、そこまで考えて、ふと・・・
もしかして三池監督って、業界内外で映像化不可能って言われていてどの監督もオファーを断るようなコンテンツを全部引き受けて、とりあえず”見れる”形にする凄い監督なのかもしれない・・・って思った。


ただ、、、うーんw 貴志祐介さんと松岡茉優さんのファンでなかったら★1.5くらいかなぁ。これは笑えるけど映画としては・・・って思って最後まで見たら、スタッフロールでザイルが流れた。
よかった。どうやら自分はターゲット層じゃないみたいとほっと胸をなでおろした。


原作読んで上書きしなくちゃ・・・