Jeffrey

のんき大将脱線の巻のJeffreyのレビュー・感想・評価

のんき大将脱線の巻(1949年製作の映画)
3.5
‪「のんき大将脱線の巻」

‪冒頭、とある村のお祭りの日。

回転木馬、見世物小屋、移動映画館をトレーラーで運ぶ。ここはサント=セヴェール。道に出て駆け出す子供、馬、鶏、住民、騒ぐ少年少女。床屋で散髪、広場で太鼓を叩く、メリーゴーランド。今、米国映画に触発された郵便配達人が脱線していく…

本作は1947年に制作されたJ.タチ主演のフランスのコメディー映画で、ヴェネツィア国際映画祭で監督賞に輝いた一本。

BDにて再鑑賞したが音楽と長閑な田舎町やなんて事ない描写の数々が一つ一つ意味を持ち丁寧に描かれている。

小動物のヤギを使ったり、小道具を使ったり様々なアクシデントを面白おかしく作っていて娯楽映画としては素晴らしすぎるほど良い。

所で、49年版と64年版が漸く収録されて94年版と合わせ3つのバージョンが遂に揃ったのは歓喜である。

強いて言えば乙女の星、肉体の悪魔、未完に終わったテニスのチャンピオン、オスカールも収録出来ていたら最高だったのだが…仕方ない。

にしても30年間の間で長編作品をたった6本しか作ってないって、どれほど一作一作に愛情を込めて完璧に仕上げたか…分かる。

もうね、タチがやることなすこと滑稽で笑える。

自転車に跨りたいんだか跨がりたくないんだか、わけわかんない1人で葛藤する夜のシークエンスや木の実が落下してくる場面や虫の飛ぶ音に嫌がらせされ、こっそりテントの隙間からアメリカの映画を見てアメリカは新聞配達をヘリコプターとかで行っていると観客に揶揄されるタチの顔芸…やっぱり画面から伝わるタチの187センチと言う高身長ののっぽ感がとてもいいよね。

背筋を伸ばして完璧なフォームでマウンテンバイクをこぐ人々に混じって走る爽快感はたまらないね。

そして短編にもあったように自転車が空中に浮いてしまう演出…

可愛らしいタチの仕草と狼狽に胸が熱くなる。

最後、回転木馬越しに映す小さな小さな新聞配達員の子供の心は余韻が残る。‬

‪余談だが、彼の誕生日は10月9日で自分と一緒なのである。‬

‪まだ未見の方はオススメします。‬

Jeffrey

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