このレビューはネタバレを含みます
この映画を作ろうと志したヴェルナー・ヘルツォークが、作中のフィツカラルドそのもの。
ざっくり言うと19世紀の文化の権威と言える『オペラ』に取り憑かれた男が、未開の地にある信仰文化と邂逅する、行きて帰りし物語。
主人公のフィツカラルドがとにかく魅力的。冒頭で上演ギリギリにオペラハウスに駆け込んできて「アマゾン川を手漕ぎで来たんだ!」と汗だくになってるのが面白くて一気に好きになった。
周りにいるモリーやアキリノ、船長、それからチェホンマンみたいな顔圧のチョロ機関士まで全員キャラが濃い。
それでなんと言っても、船で山を越えるスペクタクルは最高。実物っぽい船が山の中腹にどーんとある絵は、一生に一見の価値アリ。
夜中に暗闇の中で無言の民族たちに囲まれて見つめらるシーンも、底知れない恐ろしさがあってよかった。
結局のところ、金持ち達の道楽的な出資のおかげでフィツカラルドは自らの誇大妄想を実行に移していける訳だけど、その誇大妄想が『アマゾンにオペラを持ってくる!』『船で山を越える!』といちいち馬鹿げていて規模がデカいところが本当に愛おしい。
彼の願望はシュールだけど、こういうなんの役にも立ちそうにない妄想に本気になれるところが、心底カッコいい&羨ましい。