マーくんパパ

緑の光線のマーくんパパのレビュー・感想・評価

緑の光線(1986年製作の映画)
4.0
敬愛する蓮實重彦氏が推していたロメール監督作品。ロメール作は初見だがこれだけで一発でファンになった。理想が高くてなかなか気に入った異性に出会えない、その癖人一倍寂しがりやの女性デルフィーヌが主人公。楽しみにしていた夏季休暇のギリシャ旅行も女友達に急用出来てキャンセルされる、別の友達に誘われて急場凌ぎで彼女の実家シェルブールにお邪魔するが何となく居心地悪く1人散策するだけ。あっちへ行ったりパリに戻ったりの消化不良の休暇を過ごすデルフィーヌをドキュメンタリー風にカメラが追う。高嶺の理想を追わないでもっと積極的に色々アタックしないとと親切心で言ってくれる周囲の人たちへの反発でますます惨めになっていく。そんな会話シーンがこんなにも自然体風に出来るものかとびっくりする。登場人物皆んな(特に嬉々とした爺さん)がそこにカメラがあることさえ忘れた様な自然さ。海岸端で立ち聞きしたジュール・ヴェルヌの日没に瞬間現れる“緑の光線”の話に心打たれちょっと勇気が湧いてくる…。失意を繰り返し相性の良さそうな男友達を見つけるまでのシンプルストーリーでこんなにも引き込まれるロメール映画話術の妙に感心した次第。