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毒薬と老嬢の一人旅のレビュー・感想・評価

毒薬と老嬢(1944年製作の映画)
5.0
フランク・キャプラ監督作。

1941年にブロードウェイで初演され大ヒットした、アメリカの劇作家ジョセフ・ケッセルリングによる1939年発表の戯曲「毒薬と老嬢」をハリウッドの巨匠フランク・キャプラが映画化した名作喜劇です。

新妻とのハネムーンの前に、ブルックリンの邸宅で暮らす叔母姉妹のもとを挨拶に訪れた演劇評論家の主人公が巻き込まれる一連の大騒動を描いたブラックコメディで、叔母姉妹が慈善活動のつもりで無実の紳士を10人以上毒殺し、自宅の地下室にその遺体を埋葬してきた猟奇殺人鬼であることを知った主人公が、殺人逃亡犯の兄の闖入や地元警察の介入に翻弄されながらも事態の収拾を図っていく姿をドタバタ的に描いた密室喜劇となっています。

フランク・キャプラにしては珍しくブラックなユーモアに彩られた狂騒喜劇で、ヒ素入りワインで紳士を毒殺するサイコパス老姉妹や顔面傷だらけの連続殺人犯(ボリス・カーロフ似)、自分を大統領だと思い込んでいる狂った親族…と華麗なる犯罪者&精神異常一族の家系に生まれた“善良”な主人公の大慌ての事態収拾奔走劇を狂騒的に描いています。サイコパス&殺人鬼の饗宴が異彩を放つ作品ですが、殺害や死体等のショッキングな場面は一度も映さず、あくまでシチュエーションと登場人物の目まぐるしい会話劇で愉しませてくれる点にキャプラ監督の類い稀な演出センスが表れています。

主演のケイリー・グラントが一族で唯一まともな主人公を持ち味を存分に活かした大袈裟な立ち回りで笑わせてくれますし、出番は少ないですが、主人公の新妻に扮したプリシラ・レインの可憐さも目を引きます。
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