昼行灯

毒薬と老嬢の昼行灯のレビュー・感想・評価

毒薬と老嬢(1944年製作の映画)
3.9
めちゃくちゃ笑える。モラル的にどうなのとも思うけど、テディを連れてく医者が精神病院じゃなくて療養所だ、と言うところとか一応配慮してるのか?という感じもある。これ、現代でも舞台化してるみたいだけどどうやって脚本変えてるんだろう、全体的にアウトになってしまう感じもする…

室内の構造をうまく取り入れてる。墓地としての地下、殺人現場の広間、大統領のいる2階、それを繋げるテディ。「突撃」の突進が映像に勢いを付ける。後半まともキャラのケイリーグラントが吹っ切れて「突撃」する勢いと言ったら。

あかりを室内の中心部に持ってくることで、サスペンスの要たる影の演出も持ってきやすくなる。特に兄の地下室で映し出された顔の影の大きさや、手の影の鋭さは、フランケンシュタインだけでなく吸血鬼のパロディのようにも思えた。戦前にも電気のスイッチ壁付けにしてたんだって感じもあるが、キャラクターが電気を付けたり消したりすることでサスペンスを演出してるようにも思えて面白かった。

家の隣の敷地さえ墓地であるにもかかわらず死体や血を一切見せないところも良かったなーと。キャプラの矜恃?死体そのもののグロテスクさよりも、キャラクターの驚いた顔の方がコメディには重要だし、見えないことに対する興味で観客をより引き付けていたのだとも思う。でも地下室の墓地見てみたかった。

老嬢の殺人劇、兄の殺人劇、主人公の結婚という3つのストーリーの軸が絡まりながら展開する脚本のなかで、あまりラブコメが強調されてないところは特筆すべきところなのかなと。確かに冒頭とラストではラブコメが強調されているけど、逆を言えば取ってつけた導入と幕引きの道具にしかなっていない。赤ちゃん教育とかも恋愛より家族間でのコメディが主軸になってたけど、あれは一応ヒロインもギャグに参加している。でもこの作品の中でヒロイン(もはやヒロインは老嬢の方でさえある)は言わばコメディを終わらせようとしている。これは古典的ハリウッド映画のなかでは異端なんじゃないかなと。
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