三樹夫

卒業の三樹夫のレビュー・感想・評価

卒業(1967年製作の映画)
3.9
違うものになりたい、プラスチックを壊すためにダスティン・ホフマンが無茶苦茶やるという、カウンターの精神が詰まった映画。プラスチックとは、普通に良いんじゃないとされている虚ろなものです。それが本当に良いものなのか考え抜かれた上での良いものではなく、なんか良いものなんじゃないという、つまり空っぽで見せかけのもの。

この映画の終盤、本当に有名でどこでも紹介されてるのでこれ以降オチまで全部言いますけど、主人公が教会に乗り込んできて花嫁を奪って逃げる、しかしバスに乗った二人の顔からは笑顔が消えてく。このパートは、特に教会から奪うところまでは、そこだけ抜き出されてテレビでも何回も放送されるぐらいで、そこだけ抜き出せばロマンチックな映画のようなんですが、この映画はニューシネマですから、甘ったるい嘘っぱちでお茶を濁すわけではない。最後の二人の表情これからプラスチックと戦っていくという決意です。ここから始まるということを意味します。もし、エレーンが主人公と一緒に教会を出ずに医学部の野郎と結婚したらどうなるかというと、その未来の姿がミセス・ロビンソンですよ。これが良いんだというものに乗っかったけど、ただの見せかけにすぎなくて辟易してアル中になって。後、エレーンは教会から出ていくのを止めようとしていた連中の歯剥き出しにしてる姿見て、こいつらくだらねぇわと思ったでしょうね。

この映画と似たような映画は、ファイトクラブとかゴーストワールド、桐島部活やめるってよで、そんなもんプラスチックなんだよ、何の価値も意味もねーよとカウンターお見舞いされる映画。特にファイトクラブはこの映画とかなり似通ってると思うんですけどね。ちなみに、エドワード・ノートンはファイトクラブの時に参考にしたのはこの卒業だそうです。ダスティン・ホフマンとエドワード・ノートン、お坊ちゃん顔、狭い肩幅、なで肩とナリがそっくりなんですよね。

ストレートで良い大学入って寄り道せず良い企業就職してこの映画に出てきたような良い家住んで何の無駄もなくてって、だからどうしたと言われればそれまでだと思うんですけどね。プラスチックにしがみついてって、桐島部活やめるってよで、桐島がいなくなってあたふたしてた連中と一緒でしょ。
この映画はカウンターをくらわしてくれる。また、若者が必死にもがく青春映画でもある。しかし、その精神は全世代共通のものではないだろうか。
三樹夫

三樹夫