スギノイチ

不良少年のスギノイチのレビュー・感想・評価

不良少年(1961年製作の映画)
2.0
あまり面白くない。
全編を通して、非行少年(といっても恐喝程度の悪さしか描かれないが)の日常が淡々と描かれていく。
所謂映画的な演技ではなく、リアリティを重視してボソボソと現実に近いトーンで喋っていくスタイルだ。
不良少年達の「演技をしない演技」に対し、教師や裁判官といった「管理者側」が悉く棒読みで無機質に描かれているのは恣意的過ぎて寒々しいぞ。

しかも、そうやってリアリティを追及する割には不良達が素朴過ぎて生々しさに欠ける。
しまいには「恐喝は良心がとがめる」とか言いだす始末。無垢すぎないか。
それとも当時の非行少年とはそんなものだったのか。そうは思えないけど。
エロ本を回し読みするシーンがあるんだから、オナニーの一つでもさせればいいのに。

それでも印象的なシーンは多い。
顔にわざと血を付けて騒ぎ立てる若者。机に頭がつきそうなぐらい謝る不良達の母親。
少年院内の運動会も異様だ。リンチごっこ、輪姦ごっこ、運動会というよりは狂騒だ。
劇中で『黒いオルフェ』の看板が見えるシーンがあったが、偶然にもそれを連想する様な躍動だった。
ラストショットは、門を背に出所する少年の後ろ姿だが、ここが最も印象に残っている。
牢獄から解放された筈なのに、死の世界にでも旅立つかのような寂寥感があって息苦しい。
あまり面白い映画ではなかったが、このショットには変に心を傷つけられた。
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