john

ブロークバック・マウンテンのjohnのレビュー・感想・評価

3.7
ジャーナリストから50代で小説家に転換したピューリッツァー賞作家E・アニー・プルーの短編小説を映像化。リリースが早過ぎた名作との声も多い。
米国中西部ワイオミング州を舞台にしたカウボーイのひと夏の情事から始まる二人の心情描写をとことん追求した映画。
アメリカントラディショナルで男臭い西部劇的世界観の中に潜んだかもしれない影を切り取ったような稀有な作品。

1960年代というLGBTQが全く理解されない時代、しかも季節労働者というある種多様性の受け皿の欠片もないような社会の中で二人がどう生きたのか。フィクションとは言え、その丁寧すぎるともいえる心の揺れ動きの描写は観客の胸を苦しめる。
再開の約束をしないまま、それぞれ所帯を持ち金銭的に全く異なる環境で暮らす二人が互いにどこかやるせない気持ちで生きていることを執拗なまでに描くことで「想い」に「カネや社会的ステータス」は勝てないことを強く表現している。

最後のシーンは悲しくも、それでいてどこか救済を模したような静かで力強い終わり方をするところも他の似たような映画とは一線を画している。フィクションだからこそ物語として非常に自然な着地点で幕を閉じている気がした。

カウボーイハットと、Gジャンと、ウエスタンシャツ、テント、馬、山羊、キャンプファイア、小屋、資産家といった西部劇の要素を少し現代風に落とし込み、マイナーコードなどの暗くて不気味なピースも散りばめながら静かに奏でられるバイオリンやアコーススティックギターのカントリー調な音色で観る者を包む、唯一無二のアメリカン映画。
ヒースレジャーが強烈。

Jack Twist : I wish I knew how to quit you.

Alma Jr. Age 19: Daddy, do you need more furniture.
Ennis Del Mar: Yeah, well... if you got nothin', you don't need nothin'.
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