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タッチ・オブ・スパイスのミニのネタバレレビュー・内容・結末

タッチ・オブ・スパイス(2003年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

オープニング直後の、塔の上で男の人がアザーンを歌っているシーンから心を掴まれる。
舞台はトルコ。
イスラム圏の空気最高です。

スパイス屋を営む祖父と少年の心の交流がストーリーの基軸となる。スパイスを宇宙になぞらえるシーンが印象的。
すべての中心に位置する太陽は胡椒、金星はセクシーなシナモン……。
スパイスでいっぱいの屋根裏部屋で過ごすうちに、少年は料理の才能を目覚めさせていく。
ここで出てくる料理がみんなおいしそう!
シナモンを入れた肉団子の味は想像がつかないけど、茄子の中にスパイスをきかせた挽肉を詰めた料理は私も作ってみたい。

しかし少年時代というものは、得てしてほろ苦い痛みとともに終わりを告げるもので、ファニスの場合もギリシャへの強制退去という悲しい出来事とともに、料理を作ることを禁止され、慣れ親しんだ言葉とも別れを告げなければいけなくなる。
そしてなにより、愛する祖父や幼馴染の少女との別れがあった。
少女のことを忘れられないファニスは、家を抜け出し汽車に飛び乗るが──。

このあたりの描写が繊細ですごくいい(両親への抵抗としてバスルームに住んでしまうファニスが可愛い)。
悲しい出来事もみんなどこかユーモラスに描かれているせいで、悲愴な感じがまったくない。ある意味、ギリシャ人の性格が出ているのかも。

ただ、少年時代がすごくよかっただけに、幼馴染の少女と再会してからの大人時代はどこか平凡に思えた。
ありきたりのハッピーエンディングにしなかった点は高評価だけど。

地味だけどすごくいい映画です。
おすすめ。
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