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キャンディマンのブタブタのレビュー・感想・評価

キャンディマン(1992年製作の映画)
4.0
【〈キャンディマン〉という形而上的存在⠀】
ジョーダン・ピール(制作・共同脚本)版見る前に遥か昔に観た『キャンディマン』を再鑑賞。
スラッシャーホラー映画というよりもスリラー、ミステリーそして何より映画として可也よく出来てるし質が高い。

都市の風景の、舞台はシカゴなのにクローネンバーグが撮る冷たいカナダの都市みたいな映像。
オープニングの都市の風景等等映像も凝ってて美しいのはニコラス・ローグの映画で撮影監督を多く務めたアンソニー・B・リッチモンドが撮ってるからなのね。

1890年アメリカの恐らくは南部、人種差別から非業の死を遂げた黒人が怨念により〈キャンディマン〉となり復活する。
アメリカの奴隷制に始まり人種差別、土着的な因習による悲劇がやがて都市伝説に姿を変えて現代のシカゴに蘇る。

トニー・トッド演じるキャンディマンの、長身の黒人・ロングコート・切り落とされた右腕には鉤爪ってこのスタイル、キャラクター造形が余りにもカッコイイ。

キャンディマンの都市伝説を調べる大学院生ヘレンがやがてキャンディマンに取り憑かれ悲惨な運命を辿る話し、なれどキャンディマンはヘレンにしか見えないから全てヘレンの妄想って事も有り得る。

のち作られるデヴィッド・フィンチャー『ゾディアック』でも本当はゾディアック何て連続殺人鬼は存在せず、名を語る愉快犯や〈ゾディアック〉という一種の熱狂的現象に取り憑かれた人達の【共同幻想】なのでは?みたいな感じがして〈キャンディマン〉もそれと同じく都市伝説や噂話が人々の口から口へ伝染病の様に感染していく内に、その実体が有ろうが無かろうが現実の存在となってしまう。

「俺は壁の落書き」「俺は教室で囁かれる噂」

シカゴを走る幹線道路を上からずーっと映す映像で始まる。
この都市の風景・景観で始まるオープニングはSF作家jgバラードのテクノロジカル・ランドスケープ=人間により生み出された人工空間が人間の精神に与える影響、其れは人間の心「怨み」「呪い」といった負の感情から生まれた物が都市の中でどの様に変容し生きている人間に迄影響を与えるのか、〈キャンディマン〉という都市伝説が公衆便所の落書きや教室の噂話といった一種の「依り代」「装置」によって徐々に増幅されて行き、やがて〈キャンディマン〉という実体を持つに至る。

〈キャンディマン〉はヘレンの脳内世界の存在かも知れないし、だとするとコレはバラードの書く小説「内宇宙SF」みたいでキャンディマンは形而上的存在の怪物、鏡の前で〈キャンディマン〉と五回唱えれば誰の元にも現れる不条理且つ人間の好奇心や「怖い話」を欲する心を餌にする妖怪みたいなモノかも知れない。

ヘレンが見た〈キャンディマン〉も全ては(ヘレンにとっては)実体を持った「幻」であり倒す事も殺す事も始めから不可能な存在。
始めからヘレンはキャンディマンを召喚する「触媒」で自分自身もキャンディマンとなる運命だったのか。
以下結末感想なのでネタバレ⚠️










篝火で火炙りにされたヘレンが今度は死んだ?キャンディマンに代わり新たなキャンディマン(キャンディウーマン?)になる絶望的且つ救いのない結末。
しかし火傷スキンヘッドで鉤爪持ったヘレンは『ヘルレイザー』のサノバイド化したみたいな姿で実にかっこくて浮気男ぶっ殺すラストはカタルシス🐝⋆゜
他のスラッシャーホラーとは一線を画す隠れた名作の名に何相応しい作品。
ジョーダン・ピール版『キャンディマン』により更に見る人が増え評価も上がってるのが嬉しい🐝⋆゜🐝⋆゜🐝⋆゜🐝⋆゜🐝⋆゜🐝⋆゜🐝⋆゜
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