B級怪獣エイガ

二十才の微熱 A TOUCH OF FEVERのB級怪獣エイガのレビュー・感想・評価

二十才の微熱 A TOUCH OF FEVER(1993年製作の映画)
3.8
私、B級怪獣エイガの本名は【峰尾 宝】年齢は【23歳】

突然【ガチの個人情報】を垂れ流して暑さで気が狂ったのか?と思われるかもしれないが違う。

俺は気が狂ってなどいない。



最近全然マークできてなかったが、それもこれも友人と2人で映画を作っていた。
そして大変ありがたいことに、ぴあフィルムフェスティバルのPFFアワード2022の入選作品として選ばれた。本当に嬉しい。(文面では固いがマジでもうめちゃくちゃ喜んでる。)
その中で先日、入選監督オリエンテーションが開かれ、そこでスタッフの方々や入選監督達と交流をした。その後に今作『二十才の微熱』の監督登壇上映イベントに招待させて頂き鑑賞。
なんでも今作の監督はPFF出身ということでその点でも非常に興味を引かれて楽しみだった。

鑑賞。

お恥ずかしながら橋口亮輔監督作を見たのが今作が初めてだったが、とても丁寧で繊細な作風で良かった。

カメラは基本固定でさらに人物が全身映ってる引きの画での長回しが非常に多い。
そんな中から効果的に打ち出される寄りの、なおかつカメラに動きのあるショットには『おっ』とならざるを得ないパワーがあり、感情を動かされた。

また「キャラクター達の抱える複雑なモヤモヤな感情」との語り手としての向き合い方・表現の仕方に甘えがない上に面白い。
例えば「失恋しきれてないけど吹っ切れた風に笑いながら公園で仲の良い友達にその失恋の話を話す」キャラのシーン。
そのキャラは笑いつつも手に持ったバウンドするボールを常に落ち着きなく地面に弾ませその友達の周りをぐるぐる回り続ける。取り繕った言葉や笑顔だけでは隠しきれていない動揺、モヤモヤがボールを弾ませ辺りを右往左往していくほど痛いほど伝わってくる。

そういうシーンを上記の固定カメラ引き画長回しで淡々と映されるのでじわりじわりと彼らの内面に引き込まれていく。

主要の2人ももちろんのこと、2人のことがそれぞれ好きだったり関わってくる2人の女の子のキャラクターがまた興味を惹かれた。
特に主人公に絡んでくる先輩の方のキャラ。彼女の仕草や関わり方が普通にドキドキしちゃった。『あなたのことは好きよ…でも…』のこの感情、そして【面倒くささ】よ。そうなんだ、面倒くさいんだ、でもそんな面倒くさい感情に向き合うキャラだからこそ追いたくなる。


そして今作を語る上で外して語るわけにはいかないラストの主要2人と客のシーン。
ここのシーン、上映後の監督の登壇のお話で初めて知ったのだがここのお客役は本来、冒頭で耳を舐めまくってたおじさんのキャスティングだったらしいが、監督自身が「ここで冒頭の役者が出た方が映画として綺麗で、ここで私が出て映画がめちゃくちゃになったとしてもそれでいい。これは私の映画だ。」と監督の証明のために出演したとのお話をされていたのだが、その話を聞いた上で思い返すとより、感慨深い。
黙り決め込み、お客を拒否する主人公達に対して怒りの感情もありつつも、『私だってね…寂しい』とお客(監督)が感情を吐露し半泣きになるところが思い返すと結構クる。

今作の制作年は1993年。この頃に同性愛を扱う映画を日本で撮る事の難しさ/大変さは登壇の際に監督が話していたが本当に苦難ばかりだったことは想像にかたくない。
撮影の最中も監督自身ゲイだと言うとを言わずにいたらしいがこれがとても苦しかったと話されていた。そしてそんな中、ついに主演の子に自分自身がゲイで『自分のこういう経験からこの部分の台本は来てる』など話したらしいのだがそれを受け、主演の子は泣き出しそこから演技に磨きがかかったとか。

そういう監督登壇イベント込での今作は非常に有意義な時間で、これから見るどんな映画に対しても、また別の角度の視点が加われた気がした。

今作で監督は映画が台無しになってしまったとしても最後自分が出演することでこれは『橋口亮輔の作品です。』と全ての責任を背負う覚悟の上示して見せた。その姿勢がとてもかっこよかった。

今回、自分の作品が入選し、今作に招待して頂かなければ今作とは到底出会ってなかっただろうことを考えると自分の鑑賞体験として貴重であり、その点でも心に残る映画になって本当に良かった。(関係者席とかいう表記の入ったチケットはもはや宝物。)

監督の他の作品もチェックしてみたい。


そして、この私B級怪獣エイガこと【峰尾 宝】が友人髙橋直広と2人で監督/制作しPFFアワード2022で入選した映画「スケアリーフレンド」に関しての情報は今アカウントのプロフィール欄にて。(いつかフィルマークスにスケアリーフレンドが載ることを夢見て)