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マッドマックスのhasseのレビュー・感想・評価

マッドマックス(1979年製作の映画)
4.0
演出4
演技3
脚本4
撮影5
照明3
音楽4
音響5
インスピレーション4
好み4

エンジン、ニトロ、ホイール音の洪水に頭がくらくらする。勿論いい意味で。車周りの音響だけ切り取った音源がほしい。

当時、製作国のオーストラリアで社会問題化していた暴走族を悪役として置いている。台詞がないモブはモノホンの族のお兄さんたちで、撮影現場は荒くれ者が跋扈する異様な空気に包まれていたという裏エピソードが面白い。

暴走族の言動は破壊的で、それは狂気じみているが、独りよがりで欲望のまま生きる子供っぽさを感じさせる。それをマックスら警察が取り締まる。子供の狂気を大人の倫理で押さえ込むのだが、この映画の良いのは、それを勧善懲悪的な二項対立で描くのではなく、「大人」も道を誤ればすぐに「子供」に転落することを描いている。

マックスは同僚の死の後、「このまま走っているといつしか自分も暴走族と変わらなくなる」と上司(観葉植物好きの強面ナイスガイ)に言う。彼は「大人」から「子供」にしかけた瞬間、自ら警官を降り、家族の時間を作る。彼は夫であり、父親である。自分を「大人」側に引き戻そうとする試みだ。
しかしそれは、暴走族の急襲により崩れ去る。妻子を奪われたマックスは復讐の鬼と化し、暴走族を殺戮する。ラストシーン、ひたすらに己の欲望の充足に徹した彼が走る先は、荒れ果てた一本道だ。良し悪しの次元ではなく、その空虚さを描き出すことに成功した名作。
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