LUXH

マッドマックスのLUXHのネタバレレビュー・内容・結末

マッドマックス(1979年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

暴走して自滅する輩も異様に多発。ほとんどの男はいいヤツがいない。

カーアクションは物理的な衝撃をもろともしない印象が強かった。車が車を突き抜ける。燃え尽きるまで、吹っ飛ぶまで、或いは壊れて走行不能になるまで障害物があろうとアクセル全開ノンストップ。車とバイクで繰り広げる、暴走族と一応警官、のお話。

1時間半の尺。冒頭から50分はほとんどストーリーというストーリーはなく(初見ですすみません)、走って走りまくる奴らが延々と、という感じ。映画的な事の発端となる暴走族はすごい低脳で、警察は馬鹿!俺は最高!捕まるもんか!俺ナイトライダー!的なことをすっごい繰り返す。他に台詞あるだろうという位いい意味で頭の中がざわつく。それからこのナイトライダーって奴を中心に報復劇が始まるのだが、コードネームがださい。満点にダサい。真昼間にナイトライダーって。騎士のナイトかと思ったがそれにしたってライダーとの組み合わせはダサいし英語字幕も確認したらやはり夜のナイトだった。警官も煽られたら挑発に乗るし、手に負えないガキの相手してたら日々そうなってくるもんなのかなって解釈しようとしてたけど、追いかけるのを楽しんでるんだね。ガキというような風貌や歳の差でもないし。反芻すると確かに主人公が言ってた「肩書きがなければ暴走族と同じような気がして」は最初から示されている。上司もジョウロ持ってたり可愛いけど大義が通れば何してもいい、という雑多ぶり。

人が轢かれたり痛々しいシーンは上手くアングルをつなげたり驚きの目をどアップで映して直接的な視覚衝撃映像を控え、主人公がフラッシュバックにさいなまれるシーンを通して(多分)子供でもみられるように効果的に表現している。と思ったら腕轢かれるシーンが最後に来て、鈍い子でも痛みを感じることでしょう。暴走族と警官だから何人も同じ格好の人出てきてこういうの見慣れないからどこまで識別して覚えればいい?!無理す。と半ばで思ったけど、ちゃんととりあえず見てれば大丈夫。低予算らしいけれどもよく練られているのではないでしょうか。

そう、これって前半は単に暴走や物的破壊を愉しむように出来ていて、巧いアプローチで警鐘を鳴らしている作品なんだと思う。走りを妨害する人を燃やすまでいったらそこまでする?って思うし、ほぼ実的関係のない母子を躊躇いもなく阿吽の呼吸で轢き殺し走り抜ける行動が出来る?と感じる。最初でも言ったけど単独事故多いこと、焼死体や幼児の命が奪われる様をみせつけているし、ただ復讐のためにエリートだった(元?)警官がパトカーを無断で持ち出し関わった奴らが死ぬまで追走する、最後にはちょっと(本作に出てくる登場人物と比較すれば)巻き添えくったレベルに思える奴に極刑を下す。迷いなく淡々とあっけなく終わるシーンは40年弱前位の映画だけど新しいとさえ感じた。

善悪を社会的地位で区別しない、走るのは悪いことですよ、怖いことですよ、という台詞や直接的な演出は一切といっていいほどない。間接的に感じさせる映画だ。この作品が"イイ!"っていっても暗にそういう道徳的教訓を指摘してるから、という理由を含ませない位には抽象的だ。(でも、皆が感じると思う。走り屋だけどもそこまでは踏み外さないぞ、とかこんな大人にはなりたくないなとか。説明が矛盾してややこしいけど)

CMの三大鉄則があって、幼児、動物、美女。登場は全体から見ると短いんだけれど全員被害者で巧くアプローチしている。ハッピーエンドじゃないんだけれど、主人公が途中で語る揺るぎない父への尊敬、おばあちゃんの悪党に対して臆さず銃を向ける強さと子を守る信念に救いを見出せる。守ろうとした子は呆気なく奪われてしまうのだけれど、幼い頃に感じた事や、弱者に対して守ろうという気持ちが芽生えるのではないか。
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