EDDIE

ロード・トゥ・パーディションのEDDIEのレビュー・感想・評価

4.6
美しく切ないギャング映画。父と子の愛と絆の物語であり、ギャングたちの緊張感漂う抗争を描く。何よりも撮影が芸術的で1シーン1シーンに見惚れること請け合い!

今週末公開の『1917命をかけた伝令』に備えて、サム・メンデス監督作品を鑑賞しようとまだ観たことのなかった本作を鑑賞。
ギャングものとは知っていましたが、私の大好物である父と子の親子物語だったとは…2002年公開ですからね。今まで観てなかったことを後悔しました。そして、それぐらい素晴らしい作品でした。

良き父であり、良き夫の主人公マイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)は、殺し屋という裏の顔を持っていました。
そんなギャングの世界を牛耳るドンがジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)。なんとも説得力のある配役でしょうか。『スティング』でチャーミングな伝説的詐欺師ヘンリー・ゴンドーフを演じた彼とは打って変わって、完全に「悪」の顔でした。
本作には大きく2つの親子の物語があります。一つはサリヴァン親子、もう一つはルーニー親子です。
マイケル(以後父はマイクと記載)の息子マイケルJr.(タイラー・ホークリン)は、ある時父とコナー・ルーニー(ダニエル・クレイグ)が殺人を犯す現場を目撃。その後の家族の悲劇まで含めて、タイトルの『ロード・トゥ・パーディション』の意味を考えながら観ると、もう目が離せません。直訳すると“破滅への道”ですね。息子マイケルが破滅へと向かっていくのか、その動向が気になって仕方ありません。ただ結末は完全に息子を守った父親の構図がとても素敵でした。

そして本作を彩るのは個性の異なる悪役の存在です。前述したジョン・ルーニーをはじめとして、やや情けなさのある息子コナー、そして異様な存在感を魅せるマグワイア(ジュード・ロウ)の3人。
なんだかんだ息子を愛するジョンの存在は決して憎めませんし、今でいえば『007シリーズ』でハードボイルドな印象のあるコナーを演じるダニエル・クレイグはちょっと残念で可愛い。マグワイアを演じるジュード・ロウは稀に見る怪演。マグワイアは初登場のシーンからターミネーター的にマイクを追跡する様があまりにも恐ろしかったです。

撮影に関しては印象的なシーンが数多くあり、もう挙げるとキリがありません。
息子マイケルが見てしまったシーン、本作の特に衝撃的なシーンであるサリヴァン家の悲劇(ここに至ってはマイケルとコナーの玄関を挟んだ対峙、直後のコナーが外に出てからのシーン、そして真っ暗なリビングで1人佇むマイケルなど一連の流れがあまりにも芸術的でした)。さらにはサリヴァン親子が続け様に銀行に行く流れ、コナーの殺害シーン、クライマックスのマイクとマグワイアの対峙シーン。
鏡や窓に映る情景を巧く活用した撮影技法が多く使われており、記憶に刻まれる印象的なシーンが次々と脳みそを刺激してきます。

作品としてのテーマやメッセージ性で特に強いのは親子の絆でした。
何よりもサリヴァン親子は、一つ間違えれば息子マイケルが“破滅への道”を辿ってもおかしくありませんでした。そこを父として守り抜く愛情を感じましたし、似ているからこそ自分のようにはなってほしくないという強い意思を感じました。
マグワイアの奇妙すぎるほどの存在感も本作の印象的なポイント(ダイナーでの彼の存在感と視線がトラウマレベルで怖かった!)ですが、このように父と子の絆を殺し屋の世界と表裏一体で映し出しながら伝えるのがお見事でした。

時間にして119分。140分や150分を超える他の名作ギャング映画と比べれば大変観やすい作品です。是非とも多くの方に観ていただきたい傑作です。

※2020年自宅鑑賞45本目
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