SHIHA

ハタリ!のSHIHAのレビュー・感想・評価

ハタリ!(1962年製作の映画)
4.2
後からアメリカ大陸にやってきて先住民を「野蛮人」と称して、殺しまくり、奴隷にし、先住民の土地を奪ったアメリカ人の理屈そのままで、

人間目線から動物を捕獲し人間の支配下に置くことがまるで正義かのように思わせる映画で、大変不快ではある。
不快ではあるけど、ハンターのように動物を殺しまくるわけではないです。
日々、弱肉強食の世界で、ライオンが馬を食ってるわけだし、、、一匹や二匹ぐらい。。。
さらにいえば、彼らは生きた動物の需要があるから捕獲しているだけで、その需要者とは誰なのかを考えれば、たぶん、動物園で動物を見て楽しみたい人なわけだし。。。。

とはいえ、見ているうちになんだか、人間としての価値観が崩壊してしまいそうになる映画ではある。
それは、
「ウシさん」「ブタさん」と、まるで動物にも人格があるかのように教えておく一方で、それを当たり前に食べてしまう大人を見た時の、あの違和感と嫌悪感である。



それらを理解したうえで、映画自体を評価すれば、


まず、笑わせる要素がとても多く、テンポもよい。

動物捕獲現場をナメていたお嬢さんが素直で、すぐに改心して仲間に詫びて受け入れられるところとか、
田舎で人数も娯楽も少ないからだろうけど、人間関係として、どんな相手でもお互いに無視したりせず関心を持ち合える、見ていて気持ちよいシーンが数多くある。

「子象の行進」の曲がこの映画のための曲だと初めて知った。それも嬉しい点。

それとは逆に、
水を手でくみ上げてる部族の映像の後に、水道を使う自分たちを映す姑息さとか、
部族の人を安い賃金で労働力を提供する奴隷的な扱いをしていて、支配と被支配の高慢さの臭いがプンプンする。
野生の動物と、飼いならした動物を使い分けて撮影し、まるで人間と動物との心温まる交流の映画なのだと言わんばかりに、まるで彼らが人間として良いことをしてるかのように思わせてしまう強引さとか、
巧妙に人の価値観を覆させてしまう点で、プロパガンダの詐欺手口としても学ぶところは大きい。


和気あいあいの話の流れの中にも、注意深く見ていると、あれやこれやと考えさせられる映画で、
高評価も、うなづける良作だと思う。


ただ、
個人的には人間として捕獲して良い動物とは、集団からはぐれたシマウマとか、怪我して死にかけの子ライオンとか、
その類の動物だけであるべきだとは思います。
SHIHA

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