薔薇

二十四の瞳の薔薇のレビュー・感想・評価

二十四の瞳(1954年製作の映画)
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木下恵介監督。
伊豆島の岬の学校に赴任してきた女教師と生徒達の戦前から16年に渡る物語。

木下恵介監督の代表作といえばこれ、というイメージはあった。そのイメージの通り大変な力作であり、監督自身の思いも見え隠れする傑作。宮崎駿はビクトル・エリセに影響を受けたのは分かるけど、間違いなく木下恵介にも受けているのも船のシーンに見える。

とにかく全ての物事の自然な推移がとても上手い。たとえば、キャストの徹底した選び方。年代ごとに別人だが似ているキャストを同じ役に当てはめていた。16年後のメンツはかなり豪華なスター揃いだが、違和感は全く感じない。

物語自体が、戦前〜戦中〜戦後と推移していくが、悲惨さが自然に生活を襲っていく。それは誰かが死んだ、日独伊の協定が結ばれたとかいう大きなトピックに任せるのではなく、戦争によってじわじわと侵食してくる”悲惨”が描かれる。

監督の他の作品のように物事をバッサリと二分して描く部分も見られる。今作は教師と生徒。戦争により生徒達に起こる惨劇を引き止められない女性教師の人生が克明に映される。

この映画と他の作品を見てはっきりした事は、木下恵介は”女性”を描く監督だという事。監督がゲイだった事や、加瀬亮が木下恵介役を演じた『はじまりのみち』でも描かれる母親愛が反映されているのが見える。

このモダンで自我が強く、それでいて母親のような愛情を芯に持つ女性像。『カルメン』シリーズに引き続き高峰秀子が素晴らしい演技で見せてくれる。とにかく高峰秀子の主人公に何度も泣かされる。
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