映画初心者

二十四の瞳の映画初心者のレビュー・感想・評価

二十四の瞳(1954年製作の映画)
4.6
木下恵介監督作品。テンポが良すぎる。2時間30分とは思えない。原作の力強さもありますが、映像面や演出面も光っていてこれぞ名作。

原作発表後からわずかしか経ってないところで映画化。それでこんな力強い作品が撮れてしまうのか。小豆島を舞台に、教え子たちが不況、戦争に巻き込まれていき悲しみを背負う教師を描く。

原作既読済み。特にラストの戦争で盲目になった教え子が小学1年の頃に撮影した集合写真をもって、見えるはずのない写真の様子を語るシーンが印象的。逆にそれ以外はあまり覚えていなかったので、今回結構新鮮でした。

3幕構成。1幕目は小学1年、2幕目は小学高学年以降、3幕目は戦争後。1幕目から子供たちのはしゃぎようが楽しく、主人公の大石先生の溢れんばかりの母性で癒されます。そこから不況、戦争の匂いがし始め、2幕目では子供たちの生活が乏しくなり、憂い。3幕目では大石先生と教え子との再会を描く。

特に、まっちゃんが教え子として印象的。母は死に、妹も死に、自身は香川に行き働くことになる。そんな中、修学旅行で香川にやってきた先生との再会。また、貧乏で修学旅行に行けない生徒もいたのも印象的でした。全員、小学1年の時を良い思い出として、鮮やかな過去、辛い現在、深みがあります。

2時間30分の長尺ながら明らかにテンポの良さで体感時間が短い。子供たちの歌がよく挿入され、ほとんど音楽映画とも言っていい。「ふるさと」や「仰げば尊し」などなじみ深い歌が流れ、重苦しさが少ない。戦争時になると、それが軍歌となり、歌の変化も描いている。ただ、戦闘シーンもなく、あくまで小豆島から見た戦争。教え子を旦那を見送るしかできない大石先生の視点。

木下監督の作品では「カルメン...」しか見たことないですが、それよりずっと良かった。そして、監督の過去作「カルメン」や「陸軍」の過去作を意識させるような要素。具体的には、洋服・自転車を乗る当時としては斬新な主人公、戦争に送る母の姿。これらから、一貫性を感じました。

映像、演出としては、ロケーション映え、画になるショットが大量。どんだけ品のある画面が出てくるのかと思いました。舞台が高台にあり、必ず海が見え、そのロケーションの良さ。そこに桜や子供のはしゃぐ姿。また、海辺、船でのシーンも最高。特に、修学旅行で香川に向かうシーン、大石先生の旦那の船を見るシーケンスがダイナミックでワクワクさせる。風立ちぬのようだった。
定期的に歌のシーンも挿入され、飽きさせない演出になっている。歌では、修学旅行の船で歌うシーンが特に好き。

若干...と思う部分はセリフが聞き取りづらいところですかね。子供たちが何言ってるかわからないところがチラホラ。

【総評】
ほとんど文句なしの名作。面白過ぎました。大石先生の母性、子供たちのはしゃぐ姿、そして大人になってからの再会。不況、戦争を乗り越えて、死んでしまった教え子はいつつも、生きなければならない。そう感じさせる作品でした。
映画初心者

映画初心者