大谷直子の喪服姿でツィゴイネルワイゼンを思い出すンゴ
冒頭でそれぞれの欺瞞を提示した後、転機が訪れ、妹と兄の対立が描かれた後に立場が逆転するという過程がとても明快かつ鮮やかに描かれている。蛇イチゴが立場の逆転の蝶番のような象徴になってるが、題名になってるにもかかわらずラストシーンまで出てこないという演出が、妹同様蛇イチゴに対するショックを観客にとってもデカいものにしている。蛇イチゴの場所へと誘う兄と拒む妹の間に川を設けて、彼岸と此岸という構図を作ったのもいい絵だった。
ラストで蛇イチゴには光が当たってるけど、妹はじめじめした室内の暗さの中にいるっていう照明のコントラストもよき。正しさと嘘のイメージが反転していることの演出としてわかりやすい。しかも、妹が玄関から移動し中庭をまなざすまでがワンショットの長回しで撮られていることも、この家族の未来を示唆していた。暗い室内を通り抜け、光の中の蛇イチゴを見つける妹の視線から、この家族は大丈夫になるだろう、と思わせる。蛇イチゴが中庭じゃなくて、ちゃんと室内の食卓の上に置いてあるのもいい。また一家に団欒が訪れるはず。
家族の目に見えない分断を視覚的に描いたのも特徴的だった。食卓を囲って家族で話しているのに、カメラはお決まりのリバースショットとはならず食卓からやや離れて家族を捉えている。食卓の上に照明があるため、カメラ手前に座っている2人には影がかかっており、不安感を煽る。ご飯の時以外でも、複数人で同一画面内で話している時は、部屋の仕切りなどが人物を分断する。それと、楽しいご飯の無音映像とともに挿入されるおじいちゃんの嫌な咀嚼音。家族の本心が台詞以外ではこれでもかというほど強調されていた。こういう家族の裏の顔という主題は総プロデューサーの是枝裕和にも通ずるものかもしれない。
それにつけても男性陣の男尊女卑というか女性や家族に対する固定観念の気持ち悪さよ。多分あえて描いているのだろうけど、全員にイラッとくるので、正義感(笑)の強い妹にはそこも指摘して欲しいところ🥹