とんかつ

浮き雲のとんかつのレビュー・感想・評価

浮き雲(1996年製作の映画)
4.0
これは………、泣くしかありません。🥲

愛すべき名俳優マッティ・ペロンパー。彼が亡くなった後のカウリスマキ作品第一作目。
カウリスマキにとっては、きっと大きな転機になった作品だろうと思う。彼の存在感は抜けていたから。


映画自体は、いつものカウリスマキ。だけど、どこかマッティ・ペロンパーを探してしまう。
ゴミ収集車がお店の前に止まった時、彼がカティを迎えに来るんじゃないかと一瞬思った。

エンドロールに入る時、「マッティ・ペロンパーの思い出に捧げる」と出てきた。
寂しいのはみんなだったと、彼への愛を感じた。

そして、エンドロールを見続けると、キャストの欄にまた彼の名が。
亡くなった後に撮影したはずなのにどこに出てきたんだろうと、役の名前を翻訳してみると「写真の少年」と出てきた。
そこで、そうか途中でカティが涙を浮かべて眺めていた写真は幼少期の彼だったのかと気づいた。

アキ・カウリスマキにとって、彼は最高の役者だっただろう。カティ・オウティネンにとって、彼は最高の仲間だっただろう。
たくさん愛された俳優マッティ・ペロンパー。彼が亡くなったのは私が生まれる10年前だけれど、今私は彼が大好きです。



この作品に関して、敗者三部作と言われているものの第一作目にあたる。
不幸続きの夫婦が主人公。
こんなに魅力的な人間が失業したままだなんて嫌な世の中だなと思うけど、人間は粘り強く頑張ってこそだなと思わせられる。そして最後の最後で最高潮を迎える大好きな構成。
やっぱりマッティがいないと笑いが少なくて寂しいけど、カウリスマキ作品常連陣が揃ってて安心感がある。ホントに、これでもかと揃ってる。
サカリ・クオスマネンはパラダイスの時より丸くなったね。みんないつも通り素敵。


これ以上に新しいマッティ・ペロンパーを見れなくてすごく寂しいけれど、カウリスマキと出会い、たくさん映画に出てくれて本当に感謝。
とんかつ

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