Joker

オープニング・ナイトのJokerのネタバレレビュー・内容・結末

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ジーナローランズによって初めて完成される映画。彼女以外の役者は考えられない。

死んだ少女は若い頃のマートル自身そのものだったのだろう。幽霊ではなく想像上である点や、死んだ少女について何も知らないのに少女がしっかりとした性格や言動で現れるあたりから、若い頃の自分そのものが序盤で亡くなった少女の姿で人格化、意識上に現れたのだろう。

老いを本格的に感じるようになってきた時期に丁度歳をとった役を演じることになり、老いついて目を背けることが出来なくなってきた時に起こった少女の事故。自分に熱狂的に夢中になっているファンの少女の姿に”若さ”を感じ、その少女が目の前で亡くなることによって、劇中でマートルが言うように、自分の中の”第一の女”つまり自分の中にあった若い頃の自分が死に、もう若さがなくなったことを認めざる終えなくなったのだと思う。それでも、「もう18ではないのは分かってる、でもまだそこまで歳を取ってない」と言うようにまだ老いを認められないが故に、死んだ少女の姿が見えたり、苦悩するのだと思う。

そのマートルの感じる苦悩や焦り、落ち着かなさがローランズの素晴らしい演技によってセンチメンタルに表現されていたと思う。きっと老いについての感情はバージニアでもなく、マートルでもなく、紛れもなくローランズ自身が感じたリアルな感情なのだろう。

ローランズに関しては非の打ちどころがなく、自分はこんなにお酒が入ったグラス、サングラス、そしてタバコが様になって似合う女性を今まで見たことがなかった。

観た後しばらくして満たされるような余韻が伝わってきた。このような余韻は展開やストーリーによってくるものではなく、役者の素晴らしい演技によってしか来ないものだと思う。自分も席を立ってつい拍手を送りたい気分になった。
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