ふかい

オープニング・ナイトのふかいのレビュー・感想・評価

オープニング・ナイト(1978年製作の映画)
4.5
「現実の自分」と「虚構の自分」の間とで生じる分裂は、終盤のカサヴェテス/ローランズ夫妻による怒涛の即興演技合戦に収斂される。ここで重要なのは、ローランズ演じるマートルは舞台女優で、映画の半分くらいはまた別の役を演じるという入れ子構造になっているということだ。この構造は濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」と非常に重なる部分がある。

表現者が幻覚に苛まれる映画といえば色々あって、「PERFECT BLUE」やそれとの類似性が指摘された「ブラック・スワン」、広い意味で捉えれば「バードマン」もそれに含まれるだろう。
本作がそれらと一線を画するのは、あまりにもその幻覚=幽霊が実体を持ちすぎているという点である。このあっけらかんとした幽霊は黒沢清作品のシグネチャーにもなり、近年では「彼女はひとり」の中川奈月監督まで受け継がれている。

2023/6/25 レトロスペクティヴにて再鑑賞

劇場で観たら感動倍増し。しばらく客席が映らないのでこれは劇なのかリアルなのか分からなくなってくる中で何度も反復されるドアの開閉と、そこから見える満員の観客。「これはただの芝居よ」というジーナローランズのメタ台詞によって、この映画を見ている客席の存在も意識させる。
「歳をとった女優は使われなくなる」という悪しきシステムに怯えまくるジーナローランズの批評性(それのトリガーとなる若手女優は美しすぎるし、あっけらかんと霊と同居するシーンの透明感は凄まじい)
人生で一度は「こんなに酒を呑んでるのに歩ける人は初めて見ました」って言われてえな!
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