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金門島にかける橋のakrutmのレビュー・感想・評価

金門島にかける橋(1962年製作の映画)
3.5
誤診を隠そうとする病院を辞めて船医をしている日本の青年医師と、戦争で婚約者を亡くした台湾女性の恋模様を描いた、松尾昭典監督の恋愛ドラマ映画。日活と中央電影公司(台湾)との合作で、青年医師役の石原裕次郎の相手となるのは、オーディションで選ばれて本作がデビューとなる台湾女優・華欣である。彼女はその後王莫愁と改名して、本作にも出演している唐宝雲とともに、台湾映画を支えるスター女優となっていく。

なかなか気の強そうな顔は裕次郎好みかもしれないし綺麗であると思うが、本作ではとにかく鉄仮面のように無表情すぎる表情と、その表情でしゃべる片言の日本語のせいで、映画の世界には入り込めない。二人がなぜ惹かれ合うのかもよくわからないままである。歴史的な日台合作映画として、あくまでもメタ的な視点で鑑賞するのがよいのかもしれない。

日本側の主な出演者としては、裕次郎に思いっきり振られてしまう令嬢役の芦川いづみ、その芦川いづみに密かに恋をしている新聞記者役の二谷英明、そして、華欣の婚約者の父親役に大坂志郎。あんな綺麗ないづみちゃんが何度も無残に振られてしまうのは、ちょっと納得いかず。大坂志郎がなぜ台湾人の役をやったのかも謎。(でも、ちゃんと中国語を披露してます。)

でもなんと言っても本映画の凄いところは、映画のクライマックスで出てくる戦闘・空爆シーン。中華民国(台湾)国軍の全面的な協力の元で撮影されただけあって、スケールが大きく迫力も満点である。そもそも、中国大陸のすぐ近くにありながら、台湾が実効支配をしていて緊張が続いていた金門島でロケを行っているのがすごいし、その映像は貴重であろう。空爆シーンのロケ地はさすがに金門島ではない(映画の中では金門島の設定)とは思うが。台北の昔の街並みの映像もなかなか興味深い。なお、国民党の検閲の影響があって、(今回鑑賞した)日本公開バージョンと、台湾で公開されたバージョンでは結末が異なる(死ぬ人と生きる人が逆になる)そうである。
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