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楢山節考のleylaのレビュー・感想・評価

楢山節考(1958年製作の映画)
4.1
1958年木下恵介監督バージョンです。姥捨て山というイメージで避けていたけど、歌舞伎や文楽風の攻めてる演出やオールセットで撮るカメラワークが圧巻でジメッとし過ぎず面白かった!ストーリーは予想と違って親子愛の話。高齢化社会の現代にも通じる。

侍の切腹のように自ら命を絶つ潔さは日本人の美学。山へは行きたくないと駄々をこねる隣の爺さんの生への執着と、神に召されるからと自ら山へ行きたいと願うおりんとの対比がおりんの性格を際立てる。山盛りの白飯は「生」の象徴で“生きるとは”という根源を突きつけられる。

田中絹代、すごいっ!としか言いようがない。49歳で70歳の老婆を演じ、前歯を折るシーンはホラー並。実際に前歯の差し歯を4本取って熱演しています。ラストの山へ向かう親子は、ほぼ会話もないのに手の込んだセットと三味線の音によって見入りました。

木下恵介監督は『永遠の人』では音楽にフラメンコを使用していたけれど、これは全編に義太夫と長唄が流れる。大掛かりなオールセットも素晴らしく、川が流れていたり、雪が積もったり、たくさんのカラスが飛び立ったり、あえて書き割りの背景も良く、美術スタッフの力を感じます。劇的なライティングのドラマティックさにも見入りました。ちなみに「楢山節考」の原作者はギタリストということにびっくり。
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