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花様年華のakqnyのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
5.0
いままでスーツよりもストリートファッションで、シャツにアイロンをかけたことなど一度たりともなかったのだが、この映画のトニーレオンがとにかく男前なので完全にやられてしまった。ポマードで固めた髪の分け目が一番きれいに映る角度で撮ってるような気がするのも、彼の魅力なのだろうか。


大人の恋愛模様を描く映画でも、とにかく巨大な敵に勝ち女を殴ってキスすればいいと思ってそうな欧米映画と違って、一定の距離感で、想いのすれ違いを少ない言葉であらわすアジア映画にはきちんと余白があるような気がする。
シーンのどこを切り取っても絵になるカットは見事で、鏡や時計、赤の使い方は、なんとも洒落ているのがすてき。

不思議なのは二人の伴侶らは一切出て来ず、常に廊下の死角や社長室の電話など、間接的な想像物でしかないこと。従来の不倫映画は必ずと言っていいほど伴侶は出るものなのだが。

一つはお互いの伴侶は別の世界の住人であるように思わせることで、この映画はお互いの主観的な想像から成り立っていることを暗に示したいのかもしれない。二人を結びつけたのは彼らの必然であってお互いの伴侶によってではないことを確認するために。

もう一つは、お互いが顔見知りでもあるはずなのに、定点で取ることで意図的にそこを省くことは、アパートの隣人という近さ・狭さにも関わらず、海外を股にかける香港人の広い国際感覚をこれ以上なく表現しているように思えて、この映画が香港映画であることの必然性はここにあるとも思う。
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