何年か振りに観た
やっぱりひとつの奇跡
香港とシンガポール、夜の雨、男と女、タイプライター、路地、階段、街灯、タクシー、紫煙、電話、廊下、カーテン、ドア
物語、映像、音楽の濃密な混濁
作品の舞台は1960年代のアジア、登場人物はアジア人ながら世界観は無国籍でグローバル、つまり寓話性、普遍性の獲得に成功している
トニーレオン、マギーチャン、二人の品性のよさもこれにひと役買っている
色使い、トーン、カメラワークが素晴らしい(すべてがクリストファードイルではないにしろ彼によるところが大きいのでは)
鏡、前ボケ、フレーミング、カメラ移動、ハイスピード(スローモーション)や短いインサートの使い方…ぎりぎりのところでテクニックに溺れることなく効果的に使われていて気持ちがいい
そして映像に上質な音楽がからみあう
バイオリンの音色はこんなにも憂いを帯びているものだと知り、震える
場面場面で出てくるテーブル、デスクが心なしか椅子に比べて高い(強いて言えばレストランのボックス席も狭い)
バストショットの時に画面に密度を与えようとしたがためじゃないだろうか?
そのこだわりのためにテーブル、デスクの脚の下に高さ調整のためのものが都度置かれたんじゃないだろうか?
そんなことを考えながら観るのもまた楽しい