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花様年華のwakjgのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
3.8
うっとりする。
美しいマギーチャン。幾つなのだろう今の私と寸分違わぬ歳なのだろうか。
大人の女性だからこそ醸し出される妖艶さが気品とともに漂う。
彼女の纏うタイトなチャイナドレスは女性のなだらかなラインを縁取り、美しさをより際立たせる。綺麗に結われたまとめ髪に、程よく収まるアクセサリー、服に合わせて変化するバッグ、少し高さのあるヒール。全てが美しく、この時代の香港で暮らしたいと憧れを抱くほど。
トニーレオンも常に髪の毛をウェットに固め、タイピンを留めた少しタイトなワイシャツ姿は見惚れてしまう。映画では道端で出会った二人が雨宿りをするシーンが何度か訪れるのだが、スーツのトニーレオンが雨に濡れるのは得もいえぬ美しさである。
60年代初頭の香港を舞台に、登場するシチュエーションは、アパート、職場、道端と日常の風景だけなのだが、彼らの纏う服と着こなしのエレガントさ、ただ屋台に買い物に行くだけであっても消して気を抜かないところが、日常風景であっても常に絵画的な美しさを醸し出す。それは同時に、彼らの真面目な性格の描写でもある。
互いのパートナー、マギーチャンは海外赴任の多い夫、トニーレオンは帰りの遅い妻がいるが、彼らについては後ろ姿と声しか映画の中には映し出されない。奔放であろうパートナーたちの恋模様ではなく、抑制し続ける彼らの物語をじっくりと描く。
とにかく、美しいものに触れたい時にはうってつけだ。
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