のり

黒い罠ののりのレビュー・感想・評価

黒い罠(1958年製作の映画)
5.0
冒頭のロング・テイクに圧倒され、その後は無意識に彼のカメラワークに目を追い続けることになる。物語を忘れてしまいそうになるほどのウェルズの卓越した演出は語り尽くせないほど。

ストーリーは正義感溢れる捜査官と悪徳刑事の対決という一見シンプルなものだが、その背景には「国境線」を無意味化してしまうメキシコ人捜査官と「国境線」を維持しようとするアメリカ人刑事という構図、つまりリアルな人種問題が物語に取り込まれていて、劇中何度も意識させられる。結末についてもそのことを踏まえれば、納得せざるを得ない。

演出だけでなく、演技力でも圧倒的な存在感を放つウェルズは化物だが、マレーネ・ディートリッヒも負けず劣らずの存在感。彼女が出演するだけで映画の質が一段アップする気がする(個人的に好きってのもあるが)。

何回でも見直したいと思う映画はこれが初めてかも。
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