まぬままおま

ソラニンのまぬままおまのレビュー・感想・評価

ソラニン(2010年製作の映画)
4.2
三木孝浩監督作品。原作は浅野いにお。

まず宮崎あおい、高良健吾、桐谷健太、近藤洋一、井浦新など俳優陣が素晴らしかった…
宮崎あおいさん可愛かったな。サンボマスターの近藤洋一さんもいい味出していた。

大学生と社会人の狭間。登場人物は学生生活を延長したり、鬱屈しながら働きながら、だけどバンド活動を通して両極を行ったり来たりする。普通は4年で卒業し、社会に順応しながら働ければよいのである。だけどその普通に対する反発、葛藤を抱えながら、音楽を奏でる瞬間に生の実感を発露させる。登場人物らが音楽を奏でるシーンはどれも美しく、その発露の場面が見事に描かれている。

もちろんその発露は、現在/瞬間にしか現れない。友人と音楽やって、バカみたいに花火をする瞬間は美しいし、楽しい。生きていることを実感する。けれど音楽は止まるし、花火は消える。深遠な暗闇が無音な世界が待っている。不安定な未来。
このように音楽を奏でる瞬間らを美化せず、その代償も描いていることが物語に重みを与えている。

種田は不安定な未来に耐えられず、死んでしまう。彼の恋人の芽衣子は、喪失を乗り越えるために、彼の代わりにボーカルとしてバンド活動を再開する。この展開はありきたりと言えなくもないが、美しく物語が遂行されるので清々しい。

とにかくライブのシークエンスが素晴らしかった。それは演出や編集でごまかさず、登場人物がしっかり演奏しているからだろう。登場人物がソラニンを一発撮りしたように、ライブの瞬間をカメラに収めている。だからこそ立ち上がる美しさのような気がする。

***
「ソラニン」という曲は本当に不思議だ。
芽衣子が言っているように、聴く者の心理状態によって変化するからだ。
この曲は別れを歌う悲しい曲なのか、過去の自分からの決別をする希望の曲なのか。
心にソラニンがあることを気づくために、そのソラニンを取り除くために、いつまでもこの曲を聴いていたい。

蛇足1
ライブをするというのは、ハンナ・アーレントのいう活動だ。
私も活動的生を営みたい。

蛇足2
「ソラニン」とサンボマスターの「できっこないをやらなくちゃ」を聴きながらレビューを書いた。
アジカンもサンボマスターもやっぱりよい。またなぜ本作を観ようと思ったのかは、浅野いにお原作の『うみべの女の子』がよかったのもあるが、yonigeが「ソラニン」をカバーしているからだ。CDを買う決心がついた。