モンデン

KAMIKAZE TAXIのモンデンのレビュー・感想・評価

KAMIKAZE TAXI(1995年製作の映画)
3.9
人生のロスタイム、死に際のロードムービー。

タツオは強盗を失敗しヤクザに仲間を殺された瞬間から、既に死んでいたのかもしれない。
寒竹と出会ってからも、タツオはどこか投げやりで諦めにも似た憂いを纏っていたように思える。
大金を持ってタクシーで逃亡するも、そこに生への執着や必死さは感じられず、
ただただ余命を消化しているよう。
復讐も無計画で行き当たりばったり。
その気怠さや乾いた空気が画面にも満ちていて、痺れるくらいクールだ。

ストーリーを転がすわけでもない、無意味ともとれるキャラクターの言動、やりとりが妙に印象に残る映画だった。
これは原田監督の演出力と俳優の演技力の賜物だろう。
役所広司、高橋和也、ミッキー・カーチス、矢島健一、社会の陰で生きる人間はどうしてこうも魅力的なのか。

原田監督は数多くのVシネを手掛けてきただけあって、キャラクターの死に様がめちゃめちゃカッコいい。
特にタツオと矢島健一(役名忘れた)の最後の戯れは堪らない。
そして土門先生はダイナミックにご臨終し過ぎ笑

血なま臭い物語に対して、そよ風のように耳触りの良い音楽。
サントラ欲しくなるくらい心地良かった。

本筋からそれまくるのがロードムービーの醍醐味。
本作はそれ過ぎちゃって脇道がメインのように感じてしまう。
この無駄が最高なんだよなぁ。

極稀な日本映画である。


2015年9月3日 DVDにて鑑賞
モンデン

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