コーヒーマメ

KAMIKAZE TAXIのコーヒーマメのレビュー・感想・評価

KAMIKAZE TAXI(1995年製作の映画)
4.1
役所広司が史上最もかっこいい映画!!
元特攻隊の悪徳政治家から金を巻き上げ、ヤクザから逃げる羽目になったチンピラがペルー育ちの日系移民の運転するタクシーに乗り、逃避行を繰り広げるバイオレンス・ロードムービー。
画面から溢れる熱量が異常で、ラストシーンまで原田眞人節が炸裂しまくっていた。

チンピラが愛する彼女を失い、政治家の邸宅に押し寄せて金を強奪するまでのくだりが完璧すぎて、“今ヤバい映画を観てるぞ....”感が身体中を駆け巡った。
意味わからない体位のセックス(家の空気が凍りつきました....小1の弟よ見るな見るな見るなぁぁぁぁぁぁ)、狂った彼女の即死っぷり(首の脈一つで表現する監督の感性に脱帽...)など、見どころが多すぎて、思い出すだけで吐き気がする。(褒め言葉)
そして何より、政治家宅への襲撃シーンの迫力が凄まじい!!!!!
ものすごい勢いで家を襲うチンピラ共を、ものすごい勢いでカメラに収めている。
まるで自分自身がその場に居合わせているかのような、緊張感、閉塞感、恐怖感。
あまりにも恐くて窒息しそうだった。笑

そして、そんな、“歩く狂気”こと若いチンピラを、タクシーに乗せるカタコト日本語の移民を役所広司がこれまた完璧に演じ切っている。
たくさんの映画で観た役者にもかかわらず、本当の移民にしか見えないのだから驚くしかない。
特に、終盤での彼のオーラは尋常ないものがあり、見ているだけで飲み込まれそうなほど殺気に満ちていた。

一緒に逃げていくにつれて、徐々に二人の距離は縮まっていく。
そして、明かされる、日系移民の過去。。
予想していた範疇の内容ではあるものの、その社会的な問題に通ずる悲しい過去は、テレビに映る悪徳政治家共との対比によって、とてもやるせない気持ちになる。

自分自身の問題ではあるが、もっと、移民問題について知っておいたほうが良かったと思う。
専門的な用語が多く、また、カタコトのため何を言っているのかわからないセリフが多々あったからだ。
とはいえ、移民問題について語るシーンは、正直、本作の足枷になっていた気がする。
その話をし出すたび、スリリングな逃避劇が一時中断され、何だかもどかしくなった。

現実では決して交わることのないであろう3人を無理矢理絡ませたぶっとんだ設定にもかかわらず、それを良しと思わせるほどの役者の演技と、原田眞人らしい繊細で大胆な演出がクセになる。
終盤にあれだけかっこいい役所広司を見せておきながら、最後は笑わせてくるあたり、もう言うことなしの出来!!