甲冑

SHOAH ショアの甲冑のレビュー・感想・評価

SHOAH ショア(1985年製作の映画)
5.0
かの地上の煉獄の生還者、傍観者、加害者による証言集であり長時間に渡る内容は追体験を否応にも強いられる。露骨な演出もない分想像を働かされてしまうので内容によっては胃腸に不調をきたしそうなものもある。収容所にも色々あるが話の中心はポーランド方面の絶滅収容所=人類史初の死の大量生産システムである。「この工場において、原材料は生存している人間であり、製造製品は屍体だ。再利用パーツ(金歯、女性の髪の毛など)を除く製品は、これも効率的に[廃棄物]化される必要があった。再利用が目的なのではなく、いかにして、その痕跡を残すことなく効率的に廃棄しうるか。それが第一の目標だった。」(私の叔父の新書『北米探偵小説論21』より)毎日数千体の死を数年に渡り工場の生産ノルマと同様に製造を繰り返す果てにあるのは一切の思考と人間性の放棄であり、証言においては雄弁な言葉よりもこれ以上話す事ができないと押し黙る方が事の深刻さを物語る。アイヒマン裁判記録、ミルグラム実験、『夜と霧』、ハンナ・アーレント著書などと共に後世に残されんことを。
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