私がイメージしていた純朴で猫が好きな体臭がきついクリムトとは相反するもので、彼の芸術性というよりは人間生、芸術と社会との軋轢や歪みを描いていた気がする。終始ミステリアスに退廃的に進んでいくが、正直迫るものはなかった。画家は絵で語るべきであり映画では何一つクリムトは表現されていなかった。猫の出番が少なく、やたら水を飲み、そして子供はたくさんいるクリムト。彼をとりまくモデルとの関係性は嫌いじゃなかったけれど、この映画に登場するクリムトがもし実像に近ければ、接吻のような傑作は産まれていないと思えてしまう。残念。