Emiru

ハロルドとモード/少年は虹を渡るのEmiruのレビュー・感想・評価

3.7
顔が死体みたいに真っ白で生気を感じさせないハロルドは日々を自殺の真似事をして過ごす。おまけに母親から貰ったジャガーを霊柩車に改造するし、知らん人の葬式に出るのが趣味のエキセントリックな19歳。そんな時に生きることを謳歌する79歳のモードに出会う。モードは人の車を盗んだり、公共物の木を勝手に持ち去って森に植えたり自由気まま。住んでる家は花と絵画と素敵なもので彩った捨てられた車両。そんな彼女と過ごすうちにハロルドの顔に色が戻り、大勢の人に迷惑をかけつつも彼女と生きることを楽しむようになる。
モードの腕に刻印されたアウシュビッツの番号。映されるのは一瞬で、その後も触れられることは無いけどモードが何故にここまでめちゃくちゃに人生を生きているのかというのに深い意味が生まれる。裕福でなんでも出来る恵まれた環境にいながら満たされない青年ハロルドと、大事な人生のひと時を奪われ今を生きることを大切にする老婆のモードという組み合わせが良かった。
主役の19歳の少年を演じたバッドコートがもう76歳なのがこの作品が生まれてから現在までの時の流れを感じるけど、今見てもずっと色褪せない輝きを感じる。
人生は一瞬で過ぎていく。だから誰かを愛し、誰かに愛されよう。たったひと時の愛でもきっと永遠に心に残り、人生に希望を与えてくれる。
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