Omizu

ステロイド合衆国 〜スポーツ大国の副作用〜のOmizuのレビュー・感想・評価

3.8
【第24回サンダンス映画祭 ドキュメンタリー・コンペティション部門出品】
アメリカに蔓延するステロイド、及び筋肉信仰を追ったドキュメンタリー。サンダンス映画祭に出品されて話題になり、カルロヴィ・ヴァリ映画祭ではスペシャル・メンションを受賞した。

太っちょ三兄弟の次男として育ったクリス・ベルが監督をつとめ、兄弟のステロイド使用を発端に撮った作品。

僕自身は筋肉をつけたいとはあまり思ったことがなく、ボディビルダーとかへの憧れも皆無なんだが、やはりアメリカと日本では意識が違うということか。日本ではどちらかというと細マッチョの方が人気じゃない?

スポーツで度々問題になるステロイドだが、本当に悪いものなんだろうかという視点で貫かれている。反ステロイドの動きは増すばかりだが、実際には副作用が認められた例はほんのわずか(今はどうなのか分からない)。酒やタバコの方が断然死亡率が高い。

スポーツ選手のほとんどが手を出しているし、音楽家や軍隊でも使うのが一般的ですらある。大学生もステロイドではないが合法ドラッグを使用している。

そういえばNetflixで『テイク・ユア・ピル』というのをみたことを思い出した。そこでも大学生のほとんどが使っていると言っていたので今も変わらないのだろう。

食事制限や運動はしたくない。楽したいという欲求でなんでもサプリメントで済ませる。圧倒的に肥満率が高いということを考えればそういう国民性なのだと言っても乱暴ではないのだろう。医者を通さなくても手に入るのだからそりゃ頼るよね。

過剰に反ステロイドのプロパガンダをする動きに疑問を抱きつつ、全面的に肯定はしていない。ステロイドがよくて、タイガー・ウッズのレーシック手術はいいのか。「公平さ」という視点に立つと使ってない方が馬鹿を見るのだから使わない手はないということに。

でもそれは「勝つことが全て」という姿勢だからそうなるとも言える。アメリカの過剰な実力主義の弊害なのだろうね。

監督の弟は今どうなっているのだろう。「自分は陽があたるべき人間だ」と考え短絡的行動を繰り返す。家族のことも考えていると言うが、結局自分のことしか考えていない。

家族を通してアメリカという国の病理をみつめる面白いドキュメンタリーだった。
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