【身勝手な白人思想を絵に描いたような映画】
BS録画にて。
1970年公開の西部劇。時代は19世紀後半、南北戦争が済んでしばらく経った頃。
前半はまったりと展開します。かつてはコマンチ族と戦ったりして開拓を推進した荒くれ男たちも、落ち着いて暮らそうとしており、町には若い女の姿も見え、「定住の思想」が強調されています。
主人公のチザム(ジョン・ウェイン)も姪を呼び寄せて(というかあちらが勝手に押しかけて)、静かに暮らすつもりになっている。かの有名なビリー・ザ・キッドすら、牧場に雇われてまっとうな市民生活を送ろうと考えている。
しかし、そこに商業主義に毒された男が登場。保安官をも抱き込んで、付近の土地を買い占め、商店の品物の値段をつりあげ・・・
要するに、チザムが代表するのはまともな米国人の暮らし、悪役が代表するのはひたすら欲に動かされた独占資本主義(?)的な思想、という構図です。
でも、冷静に考えるなら、チザムだってコマンチ族から土地を奪って、彼らを居留地に押し込めているんですよね。
この映画では、チザムはコマンチ族の酋長に敬意を払っていて、酋長を乱暴に扱おうとする白人を叱りつけたりしていますが、今の目で見れば矛盾は明らか。自分はインディアンの土地を奪って我が物にしているくせに、言葉の上でだけインディアンを尊重してみせ、白人の独占資本主義にのみ悪のレッテルを貼るという、この時代の身勝手な白人の考え方を絵に描いたような映画なんです。
まあ、そういうやかましいことを言わないで見れば、後半はそれなりに面白い。
でも、チザムよりは、悪には力で立ち向かおうとするビリー・ザ・キッドのほうがカッコよく見える。
あと、最後近くで多数の牛が悪人の陣地に突撃していくあたりの迫力がすごい。一見に値しますね。
ああ、それから、最後に新任の保安官が奥さんに皿洗いをやらされているシーンに、この映画が作られた1970年という時代が反映しているかも。