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秒速5センチメートルの3618のレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
5.0
< ありふれた風景が美しく輝き出す作品 >

この作品くらい評価にギャップがあるのも珍しくて個人的にはうれしくなります(笑)新海監督は万人受けはハナから狙ってないと思われ、朝ドラじゃないし、それでよいのだと思います。本作のような作品を自分は絶賛応援いたします。「君の名は。」ファンから叩かれてもよいので本作のような作風へ回帰した続編を心待ちにしたいと思います…が、大人の事情で10年先じゃなきゃ無理そう(笑)

さて…叙情的な本作をなぜ何度何度も観たくなるのかその理由をうまく説明できなかったのだが、最近新海監督自身が書かれた一文を見つけて、腑に落ちました。

「秒速5センチメートル」公式サイト
https://www.cwfilms.jp/5cm/director/
「新海誠監督 本作に寄せて」より抜粋転記。
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我々の日常には波瀾(はらん)に満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛(たた)えています。

現実のそういう側面をフィルムの中に切り取り、観終わった後に、見慣れた風景がいつもより輝いて見えるような、そんな日常によりそった作品を目指しています。
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この新海監督の文を読み、嗚呼、そういうことだったんだと納得しました。

過去を引きずっていたり、上手に伝えられなかったり、仕事や私生活が思うようにうまく行かなかったり、人を傷つけてしまったり…貴樹はカッコ悪くてしょうがない。(それって自分も同じ。)

でも貴樹(自分)の周りには夜景、星空、電車、駅、夕暮れ、海、雪、ビル…普段気にも留めないありふれた景色が美しくキラキラと輝きを放っていることに気づかせてくれます。(新宿駅ってこんなにも美しかったっけ。)そんなかけがえのない美しい地球で今生きていることに感謝したくなる、そんな本作が大好きです。

追伸)
自分がみつけた小ネタ。転校してから半年後に明里から初めて貴樹に手紙が届いたときの便せんにはフランス語で bonheur jeune et jardin vert と印刷されている。調べてみたら「若い幸せと緑の庭」という意味らしい。新海監督は仕事が細かい。さらにその便せんにはクローバーの三つ葉と四つ葉が描かれている。これが9年後「君の名は。」の三葉、四葉につながる…まさかね、新海監督(笑)

【追記】2024年4月15日(月)リバイバル上映で初めて映画館での鑑賞。ただミニシアター系なので欲を言えばもっと大きなスクリーンやIMAXで観たかったなぁ。改めて色んな解釈ができる本作は大好きです。
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