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『螢草』に投稿された感想・評価

3.5
 日本が占領下から脱したことで海外渡航の途も広がった。国費の枠が増え留学する人がどっと増えれば数年後、成果を上げて戻って来る人も溢れるわけで。すると、口減らしで追っ払ったのに戻ってきやがったよと嫌な顔をする者も当然出てくる。
 留学2年、米国でウイルス学を研いた大木の帰国は古巣の研究機関の古株たちには予算とポストを侵害する病原のように見えてしまう。その中に狸で細菌学に留まる所長もいるとなれば大木の命運は知れている。
 こんな「白い巨塔」風な権力争奪を臭わせる状況を背景に綴られるのは、案外、大木に纏わる女3人の人それぞれの模様であるから分からんもので。

 なんとも、大木もその師匠の山形も研究一筋の政治音痴風で体よく組織から押し出される。大木も国費留学の甲斐もなく山形の私設研究所での旗揚げとなる。
 しかし、傍目には、電子顕微鏡サイズのウイルスを研究するのに水郷の真ん中、掘っ立て小屋同然の新居でどうするかと思うが、半世紀前ぐらいにはインドや南米の辺地で欧米の研究者も同じようなことをやっていたのかも知れないからなんとも言えない。

 研究所をおん出るという、とんでもない割を進んで食った格好の大木であるが、恩師山形の信念に感じてウイルス学を深めるべく謎病原体大暴れの水郷に飛び込むわけだ。すると古巣の機関も山形の意見をパクって分室を設け細菌学での研究を始めるといい、そのチーフが大木のライバル菅佐原。これが大木2年の不在の間に大木のフィアンセ澄子と結婚し今では所長も太鼓判の出世頭で、今また讒言を撒いて大木駆除を成し遂げたという因縁の相手。
 ここで、この大澄菅の三角関係を芯にして、女三人が研究者大木に愛憎の眼差しを注ぐというダブル三角な厄介そうな話となる、かに見える。
 女三人の中で、分けても大木を最初に捉えた澄子は今では勝ち馬菅佐原に賭け、こちらを振り返りもしないで2年を投げ遣った対抗馬大木の存在さえ嫌うといい、この2年でこころの何が変わったか?その華やかに熱く人生の勝ちを目指し脇目を振らないところが常人離れする。
 それと対照的に大木を慕い、三歩下がってついて行くのが大木旧知の咲子で、押しかけ看護婦を務めるが例の風土病に罹患、思い切って大木製の抗ウイルス薬試作を自ら射って謎病がこれで治るかどうかお調べくださいと、華岡青洲の妻張りの献身を示す。そんな大樹のかげに佇むようなところを螢草、ツユクサとするのだろうが、日日咲いては萎むが毎日咲いて枯れるのを知らぬ気だ。
 第三の女は、まさに第三の存在で、ショービジネスの花形、歌手でプロデューサーで他なにを持ってるのか分からないほどだが、エリート中のエリート大木のスピンオフにも我があとに道は付くの態度に惹かれてしまい援助を惜しまないという。それが、咲子の心中を知れば今度は咲子の押しを惜しまないという。

 こうした運びとなれば結果は知れたことで、大木のウイルス薬が成功し尻軽新聞まで手のひら返しのよいしょに走るが、象牙の塔は、もとより決まった事でね、と大木を呼び戻して、お見事、君の手腕は本物だ、ではウイルスのメッカ、インドに行き給えと告げる。
 そのとき、水郷で罹患して大木薬を進んで自ら射った咲子と万策尽きて接種に至った澄子は共に本復したが、澄子は大木の労作を接種された我と我が身を厭うて恨んで自殺。実に潔く、頑なで痛ましい。そんな過激さに霞んで、残された女二人はひとりは妻として、もう一人はたぶん永遠のファンみたいな陰の女?なんだろうか分からないものになってゆくんだろう。
 その傍ら、もうひとりの女として自殺した澄子の心変わりを後押ししたであろう、その母が思い出される。大木不在の2年の間に夫を亡くし一家の先行きを案じて澄子と菅佐原を近づけたのも亡き夫のイエと澄子のためであったろうが、それに応じた澄子は母の手綱に従う者ではなくて我ひとりのため走る女であった。原作の久米小説は三十年も前の大正時代半ばの作品で、久米もこんな澄子の強烈なありかたに訝るも惹かれていたのではないかとふと思う。横着して読んでないが、そう思っていたい。
 女たちはこうして事件の陰に隠れて消えて行き、また男たちの多分相変わらずな象牙の研究所とインドに去ってゆく大木と咲子の、陰謀も所内政治もありません、ただただ科学と医療と患者への至誠あるのみですという感じになぜか憮然と旅立ちを見やってしまった。

 ところでインドだが、ガンジス川が聖なる河とはいわれるものの、死者の亡骸を流す、下水処理は追いつかないのか思いもしないのか、ばい菌だらけと日本では多くがおののくところだろうが、現地の人は平気で河水を浴びて口を濯いでいて、多分健康を損なったりしないのだろう。
 なんでかと聞くと赤痢菌でも大腸菌でも、それ等にはなにがしかの寄生するウイルス類がいてそれが感染した菌はウイルス増殖に利用されて終いには溶けてしまうんだという。だから、ガンジス川の水を調べてもあれら病菌はえらく少ないのだそうだ。そして菌を溶かしたウイルスたちはガンジス川の水にたっぷり含まれて、それを飲めば菌食らいのウイルス、バクテリオファージと名前までもらっているののおかげで少なくともその菌による感染発病は抑えられるのだという。
 そうした事の解明で発展したのがウイルス学で、大木一家はそんな場所に半世紀の遅ればせで向かうわけだ。広いインドだからどんなウイルスが潜んでるだろう。